エルダー2021年11月号
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エルダー53活動事例NPO法法人生涯現役で働きたい人のための違いに戸惑いながらも力を発揮本田さんは1980(昭和55)年に花王(当時・花王石鹸)に入社し、主に商品開発、広告メディア・ブランドコミュニケーション、国際事業の仕事にたずさわった。この経験と知見を活かそうと、はりきって日本NPOセンターに出向したが、実際に働き始めると、価値観や仕事のやり方などさまざまな面で企業との違いを実感し、戸惑ったという。「最初の2年は勉強期間のようなものでした。3年目からようやく事業推進メンバーの一員になれた気がします」と本田さん。自分に何ができるのかと、葛藤する日々が続いた。そうしたなか、日本NPOセンターでは、アメリカに本部がある世界的組織「テックスープ」の日本事務局の運営を行っており、テックスープ事業(NPOなどの非営利法人がITを活用することで、活動をより効果的・効率的に進めるための環境づくりを支援する事業)の過去10年間の事業分析と利用者登録業務のサポートを本田さんが担当することに。さらに、業務分析・改善提案など、日本でのテックスープ事業の推進に貢献している。また、同NPOの事業管理業務に月次管理の導入を提案し、花王の管理会計の専門家からレクチャーを受ける機会をつくり、体制の整備に貢献した。ほかにも、アニュアルレポートの導入を提案し、2018年度から編集・制作を担当するなど、同NPOの手がける事業や組織の基盤強化の面で、本田さんは花王での経験を活かして活躍している。企業とNPOをつなぐ架け橋に本田さんは、花王と同NPOをつなぐ初のシニア人財として、同じ志を持つ後輩のために、定年後のNPO出向者に向けたカリキュラムを作成するなど、出向で得た経験や課題を花王へフィードバックし、企業とNPOの連携の充実にも取り組んでいる。こうした貢献もあり、本田さんに続いて、2018年と2020年に一人ずつ、ほかのNPOに出向して活躍している。花王の再雇用制度は65歳までのため、本田さんは2022年10月末で再雇用契約が終了する。しかしその先も、「社会課題の領域にかかわり、住みやすい社会の実現に貢献したい」と話す。その実践のため、個人の活動としてNPO法人荒川クリーンエイド・フォーラムに所属してボランティアで荒川の清掃をしたり、一般社団法人シニア社会学会の会員になりこれからの超高齢時代に望ましい社会の枠組みなどについて学術的に学んでいる。また、荒川の清掃をして気づいたことを、環境問題の解決に取り組んでいる花王にフィードバックするなど、出向を終えた後も社会にどう貢献できるかなどを考えているそうだ。「会社人間だった私が、異分野のNPOに入り、四苦八苦はいまも続いていますが、新しい世界でこれまで触れることのなかった価値観を学び、恥ずかしながら60歳を過ぎて自分が成長していることを感じます」(本田さん)高齢法が改正され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となった。その機会の一つにNPOでの就業機会も示されており、日本NPOセンターには問合せが増えているという。本田さんはいま、そうした声に応えていく仕組みづくりも進めているそうだ。本田恭助さん

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