エルダー2021年11月号
6/68

2021.114や行動、そして、若い人との融合を意識した目線や姿勢の低さ――といった特徴です。希少資格や際立った専門性はなくても、十二分に会社や社会に貢献されています。―これまでの調査・研究から得られた知見をふまえ、企業に求められる取組みについての考えをお聞かせください。池口 シニア人材は、これまで持っている能力がフル活用されにくかったという経緯をふまえると、これからの「伸びしろ」が大きい貴重な人的資源だといえます。改正高齢法を追い風ととらえ、その活躍支援対策を検討してほしいと思います。また、今回の改正高齢法は、一律的な70歳までの自社内雇用だけを求めているわけではないことも理解が必要です。 具体的には、第一に、自らのキャリアを会社まかせにせず、自分で考え築こうとする「キャリア自律」の風土を推進する。これがすべての前提です。そのためには、個人がキャリアを考える機会を増やすことが必要で、キャリア研修や本人・上司・人事の三者による面談を日常的に行うことです。 第二に、シニア社員の強みを活かす職務開発を、事業部門を巻き込んで推進する。福祉的雇用となっているのであれば、改めてシニアを戦力と位置づけ、経験を活かせる職務を社内・社外で開発する取組みが求められます。 第三に、人事制度や運営を、年齢軸から役割軸・能力軸へ見直す。個々の能力・意欲に基づいた役割付与と、貢献に応じた処遇を実現すれば、モチベーション改善、生産性向上につながります。 この10月に発行した「調査報告書」でも紹介しておりますが、いずれもすでに着手されている企業が数多くありました。―他方、シニア個人に求められることは何でしょうか。池口 何よりも、自らのCAN・MUST・WILL(何ができるか、何が求められているか、何をしたいか)を明確にすることが出発点です。自分の知識や人脈を言語化し(CAN)、会社や社会から求められることを把握し(MUST)、そのうえで自らの意思(WILL)でキャリアを選択する自律的姿勢を持つことです。―キャリア設計では、自分の強みを見極めて活かす思考が求められますね。池口 ヒアリング調査により、シニアには、その多彩な経験や人脈を背景に、「異質なものをつなぎ合わせ、新たな付加価値を創造するリエゾンの力」が、共通因子として内在していることがわかりました。「リエゾン」とはフランス語で「つながり・連携・橋渡し」のこと。当研究所では「リエゾンシニア」と名づけました。これがシニアの強みです。 シニア社員がたどってきたキャリアの軌跡はそれぞれ異なり、一人ひとりの価値観や人脈もオンリーワンのものばかりです。法や会社が定めた65歳や70歳という年齢軸のみでキャリアを考えるのではなく、個人も、自らのオンリーワンを活かした「自分だけのリエゾンシニア」をつくり上げることで、企業や社会に貢献し続けてほしいと思います。多彩な経験や人脈を活かして付加価値を創造する「リエゾンシニア」に期待(聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博)一般社団法人定年後研究所 所長/キャリアコンサルタント池口武志さん

元のページ  ../index.html#6

このブックを見る