エルダー2021年12月号
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2021.128性が高い。そのため、役職を降りた従業員のキャリアや働く意欲(仕事への意欲)・会社に尽くそうとする意欲に配慮した制度に再構築していく必要に迫られている。では、実際、どのような企業で役職定年制は導入されているのか、導入されている企業ではどのように運用され、そして、どのように評価され、さらに、どのような課題があるのかについて、著者が参加した(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2019)『調整型キャリア形成の現状と課題―「高齢化時代における企業の45歳以降正社員のキャリア形成と支援に関するアンケート調査」結果―(資料シリーズ1)』を活用しながら、紹介する。それをふまえて、「役職定年制」が制度対象者の仕事への意欲・会社に尽くそうとする意欲を下げないように機能するために、今後、どのような制度設計を行っていく必要があるのかを提案する。役職定年制の導入状況とその仕組み2(1)役職定年制の導入状況「役職定年制」を「導入している」企業は28・1%、「導入が検討されている」企業が9・8%、「検討も導入もされていない」企業が61・4%となっている(図表1)。どのような企業が役職定年制を導入しているのかについてみると、第1に、定年制と関係が見られ、60歳時点を契機として、期待する役割が現役時代(59歳以下)と変わる「定年64歳以下、かつ継続雇用65歳まで」の企業ほど、役職定年制を「導入している」企業が多くなっている。次世代の人材育成のために「役職定年制」が導入されていると推測できる。第2に、従業員規模とも関係が見られ、従業員規模が大きい企業ほど、役職定年制が導入されている。それは従業員規模が大きい企業ほど、「定年64歳以下、かつ継続雇用65歳まで」の定年制を採用している企業が多いからである。第3に、「人材育成(キャリア開発)責任主体」の方針と関係が見られ、会社主導型のキャリア開発を採用している企業ほど、「役職定年制」を導入している企業が多くなっている。会社主導型のキャリア開発を推進していくためには、キャリアの成功者であり、キャリアに強くこだわってきた部長や次・課長などの経験者を対象に強制的にキャリア・シフト・チェンジをうながすことができる役職定年制が欠かすことができない仕組みの一つであることがわかる。(2)役職定年制の仕組み―適用対象者の対象年齢の設定方法と適用対象者の役職位―役職定年制を導入している企業に関して、適用対象者の対象年齢の設定方法についてみると、「役職・資格等に関係なく一律に設定している」企業は71・5%、「役職・資格ごとに設定している」企業は26・8%である。なお、「役職・資格等に関係なく一律に設定している」企業の対象年齢は平均すると57・8歳になる。こうした適用対象者の対象年齢の設定方法は従業員規模と関係が見られ、従業員規模が小さい企業ほど、「役職・資格等に関係なく一律に設定している」企業が多くなっている(図表2)。適用対象者の役職位は「役員クラス」が15・3%、「部長(事業部長を含む)クラス」が93・3%、「次長クラス」が52・0%、「課長クラス」が95・8%、「係長クラス」が43・6%、「主任クラス」が36・7%、「現場監督者クラス」が21・6%であり、「部長(事業部長を含む)クラス」と「課長クラス」が適用対象者である企業が多くなっている。ちなみに、「部長(事業部長を含む)クラス」における対象年齢は平均すると58・1歳、「課長クラス」における対象年齢は平均すると57・2歳であり、対象年齢はほぼ同じである。こうした適用対象者の役職位は従業員規模と関係が見られ、従業員規模が大きい企業ほど、「次長クラス」および「現場監督者クラス」、これに対して、従業員規模が小さい企業ほど、「役員クラス」、を役職定年制

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