エルダー2021年12月号
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2021.1210多く、「変わらない」は38・5%、「上がった」は0・4%で1%にも満たない。他方、「会社に尽くそうとする意欲」は「下がった」は41・6%、「変わらない」は43・2%、「上がった」は0・4%であり、「仕事に対する意欲」と比較すれば、「下がった」が少なくなっている(図表3)。なお、課長クラスについても部長クラスとほぼ同じ評価である。どのような企業が役職を降りた後の「仕事に対する意欲」・「会社に尽くそうとする意欲」が変化したと考えているのかについてみると、第1に、従業員規模と関係が見られ、「仕事に対する意欲」・「会社に尽くそうとする意欲」に共通して、従業員規模が大きな企業ほど、意欲が下がったと考えている企業が多くなっている。第2に、45歳以上の管理職が「60歳以降の職業生活の設計」を自分自身でどの程度考えているのかという評価別にみると、「60歳以降の職業生活の設計」を自分自身で考えていないと評価している企業ほど、「仕事に対する意欲」・「会社に尽くそうとする意欲」に共通して、「部長(事業部長を含む)クラス」で意欲が下がったと考えている企業が多くなっている。つまり、「60歳以降の職業生活の設計」を自分自身で考えている管理職ほど、強制的にキャリア・シフト・チェンジをうながすことができる役職定年制の役割を理解しているため、役職を降りた後の「仕事に対する意欲」・「会社に尽くそうとする意欲」が下がらないと考えている。第3に、役職を降りた者に対する面談の実施状況別とも関係が見られ、面談を実施していない企業ほど、「仕事に対する意欲」・「会社に尽くそうとする意欲」に共通して、「部長(事業部長を含む)クラス」で意欲が下がったと考えている企業が多くなっている。役職を降りた者に対する面談を実施することにより、役職を降りた後の「仕事に対する意欲」・「会社に尽くそうとする意欲」の低下を抑えることができることがわかる。「役職定年制」で就いていた役職を降りる経験がある50歳代の従業員を対象にしたアンケート調査の結果(詳細の分析結果については(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(2018)『65歳定年時代における組織と個人のキャリアの調整と社会的支援―高齢社員の人事管理と現役社員の人材育成の調査研究委員会報告書―(平成30年度)』)と比較すると、経験者が役職を降りた後の「仕事に対する意欲」が「下がった」が59・2%、「変わらない」が35・4%、「上がった」が5・4%であり、6割弱の経験者が仕事に対する意欲が下がっており、会社側の考えよりも「仕事に対する意欲」が「下がった」者が多くなっている。さらに、「会社に尽くそうとする意欲」の変化からもみると、会社に尽くそうとする意欲が「下がった」が59・2%、「変わらない」が35・4%、「上がった」が5・4%であり、「仕事に対する意欲」と同様に、6割弱の経験者が会社に尽くそうとする意欲が下がっており、会社と経験者の認識の差は大きく、会社側の認識が甘いことがうかがわれる。また、経験者調査からは、就いていた役職が高い経験者ほど、あるいは、役職を降りた後の主な仕事・役割が「社員の補助・応援」を行っている経験者ほど、「会社に尽くそうとする意欲」が下がっている者が多くなっていることが明らかになっている。(2)役職定年制の「60歳以降の職業生活(キャリア)」を考える際の役立ち度役職定年制が「60歳以降の職業生活(キャリア)」を考えるために、「役に立っている」は55・8%、「役に立っていない」は40・6%であり、役職定年制が「60歳以降の職業生活(キャリア)」を考えるに際して、役に立っていると考えている企業が多くなっている(図表4)。どのような企業が「役職定年制が60歳以降の職業生活(キャリア)」を考える際に役に立っているのかについてみると、第1に、個人別育成計画作成への取組み状況との関係が見られ、取り組んでいる企業ほど、役職定年制が役に立っ

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