エルダー2021年12月号
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エルダー13特集役職定年制のメリット・デメリットはじめに1そもそも、役職定年制導入/廃止の是非については、企業ごとの組織運営の実態に応じて、短期~中長期の人員構成の変化などもふまえてその必要性が判断されるべきものですが、いずれの場合も、役職定年にかかわる高齢社員層の評価・処遇制度をどのように整備していくか、ということは共通した実務上の課題となります。役職定年制を新たに導入する(あるいは維持する)場合には、組織の高齢化にともなう課題(ポスト不足やポストの固定化による組織の新陳代謝の遅れなど)に一定の対応ができるというメリットがある反面、役職定年を迎えた高齢社員のモチベーションダウンや、場合によってはそれらに起因した組織全体の不活性化というデメリットへの対応が強く求められます。「70歳雇用時代」の背景も相まって、今後、役職定年後から退職までの期間はより長くなることが想定されるため、この問題(デメリット)は企業にとってより重大かつ深刻なテーマとなっていくと考えられます。反対に、役職定年制の廃止を選択する場合には、前述の「組織の高年齢化にともなう課題」に対してより根本的かつ長期的に向き合っていく必要が生じます。とりわけ、年功序列的な人事を基本にしてきた企業にとっては、「年齢」という便利なトリガーを用いた組織の強制的な若返り策を用いることができなくなるため、今後は「年齢」に影響されない社員の活用および評価・処遇制度を整備していくことが求められてくるでしょう。このように、「役職定年制」に関しては、「導入(維持)/廃止」のいずれを選択する場合でも、組織運営を適切に行うにあたっての実務上の課題を多く含んでいます。そのなかで本稿では、各企業があらためて「役職定年制の導入(維持)/廃止の是非」について検討するにあたり、特に役職定年制に関連する「評価・処遇制度」の構築における実務の視点から、具体的な検討事項について解説を行います。役職定年制の導入と評価・処遇制度2役職定年制の導入においてもっとも問題となることは、役職定年を迎えた社員をどのように活用していくかということであり、各社共通で頭を悩ませているところです。仮に雇用契約上の定年が60歳であるとして、一般的な役職定年の年齢が課長クラスで55歳、役職定年制の導入・廃止と評価・処遇制度株式会社新経営サービス 人事戦略研究所 マネージングコンサルタント 森中 謙介解 説1

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