エルダー2021年12月号
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特集役職定年制のメリット・デメリットエルダー15割になり得ます。特に、組織構成において中間層が薄い企業(ベテラン管理職と若手・中堅中心)においては、若手の役職者を抜擢して早期に活躍できる状態にするため、役職定年者に期待したい役割の一つです。実務上は、「マネジメント補佐」としてどこまでのことをになってもらうのかを明確にしておくことが欠かせません。ともすると、役職者よりも前に出てしまい、実質的に役職者としてふるまってしまうようなことがあれば本末転倒ですし、逆に引きすぎても役職者の早期成長を促進できないため、企業ごとにバランスをとる工夫が必要です。技能伝承の場合と同様に、「マネジメント補佐」の役割、具体的な職務や責任の範囲などについて明確にしたうえで、具体的な評価基準としても設けておくことで、役職定年者に対する意識づけを十分に行うことも必要でしょう。③ベテランプレイヤーとしての役割実際には①②よりもこちらの役割をになってもらうケースの方が圧倒的に多いものと思われますが、それだけに形骸化しやすい役割設定であるともいえます。この点、対象者が専門とする業務を単に一業務担当者として遂行してもらうということにとどまらず、つちかってきた知見や経験をもとにベテランならではの役割を発揮してもらえることが理想であるため、企業運営サイドとしては、そのような取組みがなされる環境を積極的につくっていくことが課題になります。例えば、前述の技能伝承やマネジメント補佐のような役割までいかずとも、自身の専門技術に関して社内講師を務める、業務改善のプロジェクトにたずさわるなど、全社的な取組みにかかわることで高いパフォーマンスを実現している事例もあります。上記①~③の期待役割については、役職定年後に一貫して同じ役割をになってもらうケースもありますし、会社主導により、数年おきに役割を変えることで、そのときどきで最適な配置を行っている例もあります。このあたりは本人の意向に沿いつつ、会社としての計画とマッチさせることができれば理想です。ポイント2期待役割に沿ったメリハリのある評価・処遇を行う 次に、先ほどのポイント1でも一部触れましたが、期待役割を設定するだけではなく、実際の評価制度のなかでも当該期待役割に沿った評価基準を設け、役職定年後の処遇とも連動させていく一連の取組みが重要になります。基本的な考え方は、役職定年後の期待役割に準じた評価基準をつくるということでよいのですが、特に重要なポイントは、できるだけ短期の目標設定を行い、達成度に応じて(ある面では役職定年以前よりも)メリハリのある処遇を行うことです。そもそも役職定年後の業務に対して前向きにとらえることができる人は少ないでしょうし、多くの場合賃金が役職定年前と比べて減額になっていることと相まって、ビジネスマンとしての「上がり感」から仕事のパフォーマンスは下がりがちです。そうしたなかで、自身に求められる役割を正しく認識し、役職定年後も仕事のパフォーマンスを落とさないようにするためには、目標設定や評価・処遇の仕組みを通じて常に成果を意識する機会(成果次第で処遇が上がることもあれば、下がることもある)があることが重要になると考えられます。企業によっては、役職定年者の評価・処遇について、例えば、最高評価と最低評価で賞与の支給月数が2倍近い差になるほどの制度運営上のメリハリをつけている(現役世代よりも格差が大きい)例もありますし、昇給・賞与への反映だけではなく、出来高払いによるインセンティブ報酬のような仕組みを設けている例もあります。

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