エルダー2021年12月号
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エルダー17特集役職定年制のメリット・デメリット役職定年制の目的1役職定年制とは、従業員が一定の年齢に達したときに部長、課長などの役職を解く制度をいいます。その目的は、企業ごとに相違はありますが、例えば、組織の新陳代謝を図ることを目的にするほか、人員の増加にともなう賃金支払総額の抑制という観点もあり得ます。そのほか、経営上の事情からポスト削減と賃金支払総額の抑制を同時に行うという場合もあるでしょう。これらの目的は、就業規則が不利益に変更されるときに必要となる合理性判断にも影響を与えます。自社が役職定年制を導入する目的を明確に設定しておくことは、役職定年制導入が可能となるか否かにとっても重要な出発点となります。役職定年制自体の合理性について2役職定年制を当初から導入しておくことはできるのでしょうか。労働契約法第7条は、「労働者及び使用者が労働契約を締結する場合において、使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」と定めています。したがって、役職定年制が、合理的な労働条件と認められれば、労使間の労働契約の内容とすることは可能と考えられます。役職定年制に関する裁判例のリーディングケースとして、最高裁平成12年9月7日判決(みちのく銀行事件)があります。この判例においては、55歳に到達した職員を役職から解き、専任職という新たに創設された職務に就くという制度に関して、「五五歳到達を理由に行員を管理職階又は監督職階から外して専任職階に発令するようにするものであるが、右変更は、これに伴う賃金の減額を除けば、その対象となる行員に格別の不利益を与えるものとは認められない。したがって、本件就業規則等変更は、職階及び役職制度の変更に限ってみれば、その合理性を認めることが相当である」と判断しています。したがって、就業規則の不利益変更ではなく、当初から就業規則において役職定年制を導入しておく場合には、合理性が認められると考えられます。ただし、その場合でも、「賃金の減額を除けば」という留保が付されていることから、賃金の減額幅が大きい場合には、合理性が肯定されるのか問題となる余地はあるでしょう。法律視点でみる役職定年制弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士 家永 勲解 説2

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