エルダー2021年12月号
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2021.1222従来の継続雇用制度では、高齢社員の雇用形態は嘱託社員であり、継続雇用の上限年齢は65歳で、1年ごとの契約更新が行われていた。65歳以降については、高齢社員と会社のニーズが一致した場合にかぎり雇用契約を締結する形としていた。継続雇用の勤務形態はフルタイム勤務、あるいは短時間・短日のパートタイム勤務の選択が可能で、処遇制度については、勤務形態に応じた基本給が支給され、原則昇給はないが、功労金制度があり、継続雇用の終了時に支給していた。人事評価は契約更新のタイミングで行われ、担当業務の成果および業務行動について、評価により功労金のポイントが決定された。65歳への定年延長は、旧制度下で嘱託社員となっていた再雇用者にも適用され、雇用形態は嘱託社員から正社員へと変更。処遇制度も見直され、60歳以降の賃金は一定率減額されるものの、59歳以下の正社員と同じ資格等級が適用されるほか、年2回の業績評価が行われ、評価に応じて賞与を支給する仕組みとしている。65歳定年制導入への検討をはじめたのは2017年からで、労働組合も交えて制度の内容に関する協議が行われた。社員のとらえ方は年代によってまちまちで、定年延長により60歳以降は一律でフルタイム勤務となるため、経済的に安定すると喜ぶ意見もあれば、特に50代以降の社員の場合は、60歳以降のライフプランを自分で考えている人も多く、反対の声もあったという。そこで、定年延長については、一律に65歳に引き上げるのではなく、60歳・63歳・65歳から選択できる選択定年制を採用。このように60歳(旧定年年齢)に近い50代社員の60歳以降のライフプランへの影響を軽減するように配慮した。一定の基準を満たせば、選択後の変更も可能としている。制度導入後は、9割を超える人が65歳定年を選択しており、60歳・63歳を選択する人は数人にとどまっている。ただし、60歳・63歳を選択する人がいる以上、一律に65歳定年とすることはせず、当面は選択定年制を継続する。このように65歳まで安定した雇用が確保できる環境が整備されたことにより、高齢社員のモチベーションが向上し、いままで通り戦力として活躍してもらうことはもちろん、長年つちかってきた経験やノウハウを次世代に伝えることにつながっている。管理職は一律60歳で役職を離れ「シニアリーダー」に職位変更65歳定年制の導入と同時に、役職定年制の見直しも行った。従来は58歳で役職定年としていたが、定年延長後は60歳で役職を降り、それまでの職域にかかわる仕事を継続する「シニアリーダー」の職位に就く。なお、「シニアリーダー」は59歳時点で課長職以上の者が任命されるが、上級管理職にあたる部長・次長経験者の一部については「シニアマネージャー」に任命され、後任の部長の補佐をになう。いずれも配置転換は59歳以下の正社員と同じように業務上の必要性に応じて行われる。「シニアリーダー」制度導入の経緯について、上席執行役員管理本部長兼人事部長の菊地和信氏は次のように説明する。「58歳の役職定年を廃止するにしても、経営の要となる後継者を育てるためには、若手に役割をバトンタッチする役職の入れ替わりは必要だと考えていました。とはいうものの、加齢による衰えは個人差があり、やる気がある管理職が突如として役職から降りることになると、本人のモチベーション低下という点以外にも、立場上、部下ならびに職場への影響も少なくありません。そこで役職者は一律に60歳で役職を降り、『シニアリーダー』として同じ職域にかかわる仕事をすることで若手を支え、若手育成の機会にすることにしました」「シニアリーダー」に期待する役割は二つあ

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