エルダー2021年12月号
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特集役職定年制のメリット・デメリットエルダー23る。一つめは管理職層での経験を活かし、所属長を補佐し、健全な組織運営に貢献し、自部署の目標達成・活性化に貢献すること。二つめは、長年の勤務でつちかわれた知識・技術・技能・ノウハウ・人脈を活かし担当者として業績向上に貢献し、後進の育成・指導を行うことである。どちらの役割に比重を置くかは、各部署や、それぞれのシニアリーダーの特性によるところが大きいという。例えば、営業部門では一担当者として業績の向上に貢献することを求められる傾向があり、他方、マネージャー経験を期待され、所属長を補佐する業務が主になるシニアリーダーもおり、役割は各職場の方針にまかされている。従来の継続雇用制度のもとでは、「嘱託社員では立場的にやる気がでない」という意見が聞かれたが、シニアリーダー制度の導入後は、60歳以降も正社員のまま「シニアリーダー」として一目置かれることで、高齢社員のモチベーション向上に一定の効果があった。各職場においても、所属長が業績向上の面で牽引していたり、部署を兼務したりすることが多いため、マネージャー業務を補佐する「シニアリーダー」は心強い存在となっている。60歳直前に希望の部署に異動し「シニアリーダー」として活躍松本公きみ寿としさん(62歳)は、バルブ事業部の部長であったが、現在は、環境ソリューション事業部のシニアリーダーとして本社に勤務している。所属するO&M技術課は、上下水道における水処理施設の運転監視や維持管理を行う部署である。関東地区を中心に6カ所ある水処理施設のうち5カ所に同課員が常駐し、人々の生活に欠かせない水を、安全・安心な品質に処理して必要量を送ったり、生活排水を浄化したりしている。同時に水処理機械が持つ機能を十分に発揮できるように管理し、不具合が生じた際には修理を実施している。松本さんは主に課長を補佐する役割をになっている。担当しているマネジメント業務は多岐にわたり、例えば、各施設からの進捗状況の報告を受け、質問などをして状況を確認。問題があれば解決に導く。また、毎週行っているWebミーティングでは司会を務めている。大規模な施設では複数の事業者が運用にかかわっており、その窓口を担当することもある。さらに、予算の管理、報告書のチェック、作成などさまざまな業務を行っている。また、一技術者としての役割もになっており、同社が常駐せず維持管理をまかされている水処理施設の年次点検や、点検の計画とその実行などの業務も行う。教育係も務め、若手や新人にはOJTで作業を通じて指導し、知識・技術などの伝達に努めている。松本さんは59歳までバルブ事業部の部長を務めており、60歳を前に環境ソリューション事業部への異動を願い出た。「かつて水処理の仕事をしていて、これが自分に合っていると感じていました。60歳で後輩に役職を譲ることになりますから、役職を解かれて、一担当者として働くのであれば、最終的にやりたいこと、いままでやりたかったことを選択しようと思い、異動を希望しました。浄化技術にはいろいろな手法があり、さまざまな技術を試して不純物質を排除する仕事にはやりがいを感じています。大学時代に化学を専攻していたこともあり、行政からの相談事に対して実験によって応えることは楽しいですね」と充実した表情で語る。「シニアリーダー」への就任にあたっては、「当初は『役職でもなく、一体どんなものだろう』ととらえどころのなさを感じました。実際、シニアリーダーとして、技術者として、持てる力のすべてが求められるので、以前のような継続雇用制度の嘱託社員より、よい制度だと思います。裁量をもち自由にやらせてもらって、関係

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