エルダー2021年12月号
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2021.1226賃金はどの職種においても60歳到達時の8割とした。これについては、5年間の定年延長により生涯賃金が増えることとなるので、労働組合や社員から納得を得ることができた。さらに2017年9月、多様な働き方を可能にするために、「短時間正社員制度」を導入した。育児や介護、加齢による体力の変化など、本人のライフスタイルなどに応じて正社員のまま労働時間を選択できる制度である。同時に、定年後再雇用の「シニア社員制度」について、雇用上限年齢を66歳から70歳に引き上げた。定年延長とあわせて導入した役職定年制2010年の65歳への定年延長にともない、60歳の役職定年制を設けた。原則として、60歳到達時、すべての役職者がそれを降りるという内容である。例えば、運行管理者は、60歳以降は再び運転業務に就く。事務職の部長や課長は、総合職の一社員となる。ただ、会社が必要と認めた者については役職を継続することとしている。役職定年制導入のねらいについて、同社人財管理本部人事部労務課の坂さか谷たに直なお亮あき課長は、次のように話す。「組織の新陳代謝と若い社員に対するモチベーションの喚起が目的です。65歳定年で役職をそのままにしておくと、例えば、これまで40歳で管理職に就いていたのが、5年延びて45歳となり、下の世代がつかえてモチベーション低下のリスクが生じると考えました」役職定年後の社員に期待する役割は、「若い社員に経験を伝えること」。役職定年にあたっては、各職場の上長と面談し、以降の役割や仕事について話をすることにしている。基本的には、同じ部署で勤務を続けるため、新たな管理職の相談相手になるケースが多くみられるようだ。■役職定年制導入後の状況①バス・電車の現場部門役職定年制導入から7年目の2017年、制度の運用について一部の見直しを行った。それまで、バス、電車部門では60歳を区切りとして役職を降り、一律に運転士に戻ることとしていたが、人によっては十年単位で運転業務から離れていたため、再び運転することに不安を抱く社員もいる。そこで、そのような場合は、60歳で役職は降りるものの、乗務員の指導・教育などを担当する「助役」や「監督」として活躍してもらうこととした。具体的には、若い運転士と一緒に乗車して指導することや、出勤した運転士の点呼をするなどの役割もある。「早くに管理職に登用された社員は、もともとその資質があったからであり、運転士に戻るより管理的な仕事をになってもらうほうが能力を活かせると考えました。そのほうが本人にも会社にもメリットがあると判断し、見直しを図りました」(坂谷課長)役職を降りた後に運転業務に戻ることが不安という声は、役職定年制導入当初から聞かれていた。そのような場合、当初は、職種を変えて事務職に就いてもらうなど、新しい役割をつくるといった対応をしていたが、高齢社員の増加により対応が必要な人数が増え、今後も増えることが予測されたため、制度の見直しにふみ切ったのである。見直し後は、新しい職種をつくるということはなくなり、この課題は解消された。「とはいえ、降職後は運転業務に戻るのが基本で、人数も断然多いです。もともと運転が好きだという社員もいますし、『管理職を卒業できてよかった』という社員もいます。65歳まではフルタイムで運転業務を行い、66歳以降のシニア社員になってからは個別契約でフルタイムを続ける人、短日・短時間勤務を選択して乗務している人もいます」(坂谷課長)②事務職役職定年後は、いわゆる一般社員に戻ること

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