エルダー2021年12月号
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特集役職定年制のメリット・デメリットエルダー27を基本としている。導入時から制度の見直しはしていないが、2021年4月に新たに導入した管理職制度を、今後は役職定年者にも適用することにしている。この新制度は、適材適所の観点から役割の明確化を図り、マネジメントとは違うキャリアアップの道を開いたもので、ラインの管理はしないものの、部長待遇として「主幹」、課長待遇として「主査」を新設した。例えば、各部署において専門性を発揮し特定のプロジェクトリーダーを務めるといった役割である。課長から主査になったり、主査になった人がプロジェクト完了後に再び課長に戻ったりすることもあるという。「各職場の取組み状況をみながら本人の能力を活かす役割へと、柔軟に異動する仕組みです。役職定年者にもこの制度を適用し、役職は外れますが、主査としてプロジェクトを率いてもらうなど、経験を活かしてもらう役割を考えています。実際の運用はこれからになりますが、主幹・主査の役割についてメッセージを発信しながら、進めていきたいと思います」と坂谷課長は説明する。同社では、「やりながら改革し、よりよい形に見直していく」という進め方が多いという。役職定年についても同様である。そうしたなか、役職定年制を導入して感じたのは、役職定年者の資質、能力、経験はそれぞれ異なるので、「『一律に降職する』のはむずかしい」ということだ。そこで、個々を活かすために、これまで以上に適材適所の人事に力を入れている。シニア世代に期待する役割とその変化役職定年後の社員への期待は、11年前の制度導入時と現在では、少し変化した点があるという。坂谷課長は「若い社員に経験を伝えてもらうという期待と、能力と経験を活かして長く健康に働いてもらいたいという考えがベースにあることは変わりません。ただ、IT化が進むなど働く環境の変化が激しい現場なので、何歳になっても新しいことを吸収する力というものが以前より求められていると思います」と話す。この点について、田村智康人事部長が次のように言葉をつないだ。「人生100年時代とされるなかで、65歳まで働くことがあたり前になってきました。そこで、65歳まで能力を発揮して仕事を続けるために何を学び、自分をどう成長させるかが大事になってきていると思います。従来の定年年齢である60歳を一区切りにするという意識ではなく、65歳までは会社のために成長するんだという気概を持ってほしいという期待が、10年前とは変わってきたところだと思います」早くから高齢者雇用の取組みを進めてきた同社では、こうした社員の意識の変化が早くからみられるという。制度の中身も期待する役割も少しずつ変化しながら現在に至る役職定年のメリットをたずねると、坂谷課長は次のように答えた。「運転業務に戻った人が安全運転に努めて元気に働いています。管理職と運転業務は役割がまったく異なるので、気持ちの切り替えもしやすいようです。バス、電車の現場の仕事は職制が明確であるため、管理者が元管理者に対して気を遣うことも遠慮することもなく、それぞれ人財管理本部の田村智康人事部長(右)と同部労務課の坂谷直亮課長(左)

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