エルダー2021年12月号
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エルダー29特集役職定年制のメリット・デメリット人事処遇から年齢要素を排除した新人事制度を導入造船、鉄道車両システム、航空機などの輸送用機器の製造をはじめ、各種産業用機械、モーターサイクル、エネルギー環境プラントと幅広い事業を展開する川崎重工業株式会社。同社は、2021(令和3)年7月に幹部職員(いわゆる管理職層)の人事制度を改定。その一環として、幹部職員の定年を60歳から65歳に引き上げ、あわせてそれまで58歳としていた役職定年制を廃止した。なお、一般従業員の定年は、2019(平成31)年4月に63歳から65歳に延長している。役職定年制の廃止は、「人事処遇から年齢という要素を取り払い、役割・成果に応じた処遇をいっそう強める」(人事本部労政部労政企画課長・鈴木健たけ朗お氏)という、今回の人事制度改革の核となる考え方に沿った取組みである。したがって、同社の役職定年制廃止について述べる際には、幹部職員の新しい人事制度の概要をみておく必要がある。それまでの幹部職員の人事制度は、4区分で構成される役割グレードが、役職や報酬などの処遇を決めるプラットフォームとなっていた。役割グレードは、その名が示すように役割の大きさを等級化したものだが、区分のくくりが大きかったため、担当している職務の困難さや責任の重さが変わっても、その変化をグレード変更に反映させにくかった。報酬はグレードにリンクしており、職務価値と報酬が乖離する傾向も目立ってきた。そこで新しい制度では、従来の役割グレードに代えて、幹部職員約4000人の職務分析・職務評価を行い、区分の刻みをより細かくした制度に置き換えた。すなわち、13等級からなる職務等級制度を導入したのである。職務の評価方法は、①知識・経験(そのポジションが必要とする知識・経験やマネジメント・スキルの高さ)、②問題解決(そのポジションが思考すべきテーマの視点の高さや難易度)、③達成責任(意思決定のレベルや成果責任の大きさ)の三つの要素を評価基準とし、それらをさらに分解した八つの評価軸を物さしとして用いた。ポイントは、4区分であった役割グレードを13区分に細分化して単純に昇級段階を増やしたのではないということだ。各人が現在になっている職務の価値を評価し、新たな職務等級に置き換えたのである。そして、この職務等級が報酬(役割給)を決めるベースとなった。幹部職員の報酬は年俸制幹部職員の定年を65歳に延長役職定年制は撤廃するも任期制は維持川崎重工業株式会社(兵庫県神戸市)事 例3

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