エルダー2021年12月号
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2021.1230であったが、これを月俸制にあらためた。「年俸制のもとでは、職務等級が変わっても報酬の変更に反映される機会は年1回しかありませんが、月俸制であれば、よりスピーディーに職務と報酬を対応させることができるからです」(鈴木課長)このようにして、旧制度のもとで起きていた職務と報酬との乖離の是正を図ったわけだが、乖離が大きかった人ほど、制度改定にともなう報酬額の変更も大きくなる。「そこで一定以上の増減が発生する場合は、2021年度中は移行措置として特別の激変緩和のルールを設けました。2022年度以降についても、等級の変更により月例賃金が減額となる場合は、暫定給を設定しています」(労政企画課主事補・横田浩一氏)一般従業員から2年遅れて幹部職員の定年を65歳に延長この人事制度改定の一環として、幹部職員の65歳への定年延長を行った。前述したように、一般従業員の定年はすでに65歳を実現していたが、幹部職員については60歳のままで、定年後は65歳までの再雇用を行っており、幹部職員のほとんどが、定年後再雇用制度を利用していた。そして、2021年9月末の定年退職予定者から、幹部職員も定年を65歳に延長した(定年退職日は3月末・6月末・9月末・12月末の四半期ごとに設定されており、定年に達した後、次に迎える四半期末が定年退職日となる)。当面の間は、原則として、60歳到達時点で主として後進に知識・技術・ノウハウを指導する役割に変更し、それにともない職務等級も変更となる。13等級のうち1~3が、60歳以降の幹部職員が格づけられる職務等級である(図表1)。60歳到達直前での職務等級の格づけにかかわらず、60歳以降は一部の役職継続者を除きすべての幹部職員が職務等級1~3の職務に変更となり、役割給もその等級に対応した額となる。「報酬は、おおむね役割変更前の65%程度まで下がりますが、60代前半層の賃金としては世間相場と比べても遜色ない水準となっています」(横田氏)「職務等級1~3の報酬水準は、定年延長前の再雇用者の報酬水準とほぼ同じです。現役でいえば係長クラスの水準で、60代前半の賃金としては、たしかに世間水準と比べても遜色ないのですが、人事制度の本来の考え方は、処遇から年齢という要素を排除することですから、このままでよいとは考えていません。今回は、定年延長にともなう人件費負担の急増を回避する観点から、暫定措置としてこうした方法を取り入れましたが、会社の業績も勘案しながら、将来的には60歳以降も、60歳未満の社員に対する内容と変わらない一貫した職務等級の運用を行っていくつもりです」(鈴木課長)なお、退職金はDC(確定拠出年金)・DB(確定給付年金)・一時金の3本建てで、DCとDBは今回の定年延長にかかわらず、60歳以降に引き出すことができるが、一時金は原則として65歳の定年時でないと受け取れない。「一時金の一部は前払いとして受け取ることもできるようにしていますが、在職中の給付であるため、税法上は退職所得ではなく給与所得として扱われるという不利があるので、制度利用者は限定的です」(鈴木課長)年齢にかかわらず能力・適性に応じた適正配置の観点から役職定年制を廃止幹部職員の定年延長とあわせて、役職定年制を廃止した。職務等級の役割定義を図表1に示したが、それぞれの職務等級に対応したポストの種類と職位呼称を示したのが図表2である。ほとんどのポストが複数の職務等級に対応しているが、これは役職呼称が同じであっても(例えば組織長としての部長という呼称は同じ

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