エルダー2021年12月号
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特集役職定年制のメリット・デメリットエルダー31であっても)、管理する組織のサイズや経営組織上の位置づけなどの観点から職務価値が異なり、そのために職務等級が異なることがあるからだ。役職は組織長と専門的職務の2種類に大別され、技術者の多い同社では、幹部職員の7割が専門的職務のポストに就いている。役職定年制の対象となっていたのは、幹部職員のおよそ3割を占める組織長である。それまで、組織長のポストにある幹部職員は、満58歳に到達した3月末または9月末に、その役職を解任する「ラインオフ制度」(いわゆる役職定年制)が設けられていた。しかし、年齢にかかわらず、能力・適性に応じた適正な配置を一層重視する観点から、58歳に到達したことを理由に一律に役職を解任する「ラインオフ制度」を廃止することとしたのである。65歳への定年延長も、役職定年制の廃止も、その背景には、年齢によらず、能力・適性に応じた適正配置を行っていく観点とともに、少子高齢化の進行にともなう労働力人口の減少に備える観点から、シニアの活躍機会を増やすねらいのもと、実施したものである。役職定年制廃止と同時にポスト任期制を厳格に運用し人事の滞留の防止を図る一般に、役職定年制を設ける大きな理由の一つは、後進にポストを譲り、新陳代謝の促進を図るためだといわれている。もちろん同社でも、ポストの新陳代謝により、組織の活性を維持することが重要であると考えている。この点、役職定年制を廃止しても、人事の滞留が起きないよう、同社には以下のような制度がある。その一つは、「ポスト任期制」である。一つのポストにとどまることができるのは最長5年。これが同社のポスト任期制のルールだ。今回の制度改定前からこのルールはあったが、役職定年制の廃止後は、より厳格にこのルールを運用していくこととしている。もう一つは、「コンピテンシー評価に基づく行動特性区分」の導入である。新たに設けられた行動特性区分は、職務等級制度と並んで、同社の新人事制度の骨格となる制度であり、本来は冒頭の職務等級の説明とあわせて取り上げるべき内容であるが、この制度が、役職定年制を廃止してもポストの停滞を生まない仕組みとし注)職務等級1~3について60歳到達後に主として後進に知識・技術・ノウハウを指導する役割に変更される者に対して格付ける等級とする図表1 13区分の職務等級制度職務等級役割定義13会社の経営に大きな影響を与える役割●ディビジョン長/本部長●役割の大きな統括部長/特に役割の大きな部長●特に役割の大きなプロジェクトの統括職●フェローに準ずる特別な高度専門職1211会社の経営に影響を与える役割●総括部長/役割の大きな部長●役割の大きなプロジェクトの統括職●全社レベルの特別な高度専門職109カンパニー・ディビジョン・本部等の各部門の運営に大きな影響を与える役割●部長/役割の大きな課長●一般プロジェクトの統括職●部門レベルの特別な高度専門職87カンパニー・ディビジョン・本部等の各部門の運営に影響を与える役割●(部長)●課長/各職制の担当リーダー●各プロジェクトの担当リーダー●部門レベルの高度専門職65カンパニー・ディビジョン・本部等の各部門の運営を支える役割●(課長/各職制の担当リーダー)●各職制の主要スタッフ●各プロジェクトの主要スタッフ4321図表2 職務等級と役職の対応関係職務等級原則的な使用呼称(人事管理上の職位呼称)対外的な場面での使用呼称(名刺への記載等)組織長専門的職務12~13各役職名特別主席(○○担当)担当部長10~11特別主席(○○担当)担当部長8~9基幹職担当部長/担当課長/主席(○○担当)4~7基幹職担当課長1~3ー基幹職担当課長図表1、2共に 資料提供:川崎重工業株式会社

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