エルダー2021年12月号
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2021.1232て機能する面があることに注目し、以下にその要点を説明する。コンピテンシー評価により年齢を問わず有能な人材の登用をうながす職務等級制度は、社員がになっている職務の価値を区分して処遇にひもづける制度であり、社員の能力のレベルを区分するものではない。したがって、職務等級制度のもとでは、例えば、ある社員が等級「7」の課長の職務をになえる能力を持っていても、実際に等級「7」の課長のポストに就かないかぎり、その等級の処遇を受けることはない。他方、職能等級制度では、課長の能力を保有していると認められれば、課長のポストに就いていなくても課長としての処遇を受けられるという違いがある。職務等級制度における役職定年制は、所定の年齢に到達することをもって、そのポストを明け渡すルールなので、能力の高い人が次にそのポストに座る新陳代謝が行われやすい。だが、役職定年制を廃止すると、高い能力の持ち主が、その能力に相応しい高いポストに就く機会が少なくなるおそれがある。そうした弊害をなくす仕組みとして、同社がポスト任期制を運用していることは前述した通りである。それとあわせて同社が新たに導入したのが、コンピテンシーの評価・格づけ制度としての「行動特性区分」だ。行動特性区分は、職務等級と対応関係を持ち、基本的には行動特性区分に応じて、それに見合う職務等級への配置を行うものである(図表3)。行動特性区分は、能力や適性に応じた職務への合理的な配置を実現するとともに、幹部職員の能力向上を促進することを目的に新設された。ここでの行動特性評価は、いわゆるコンピテンシーを評価するものである。コンピテンシーとは、成果に直結する顕在化した行動であり、高い成果につながる具体的な行動特性のこと。いかに知識・経験があってもそれが具体的な行動に現れていなければ評価されない。コンピテンシーの具体的な評価方法はここでは割愛するが、「顧客志向」、「効果的なチームの構築」など9項目で行動を評価し、その測定結果をもとに各人の行動特性区分を設定し、育成・配置の重要な参考情報・判断材料として活用する。幹部職員の配置、行動特性区分・職務等級の変更については、全社・カンパニーの経営幹部で構成する「人財マネジメント委員会」が審議・決定する仕組みとなっている。このように、行動特性区分は、報酬などを決める直接の要素ではないが、どの職務等級の、どのポストに、もっとも相応しい能力・適性の持ち主を配置するかを判断する際の「人財プール」として機能している。この仕組みを活用することにより、幹部職員の定年延長と役職定年制廃止によるシニアの活躍機会の拡大とあわせて、有能で意欲ある若手社員を高い職務に早期に登用することを可能とする基盤を強化したのである。「一般従業員の制度改定は、労働組合との勉強会をふまえるなど、2年間ほど時間をかけて行いましたが、幹部職員の制度改定はスピード感を重視し、企画から導入まで1年でやりとげました。環境変化が加速化するなか、はじめから完璧さを求めるよりも、会社の目ざす姿にアジャストさせるように、制度のつくり込みを続けていきます」(鈴木課長)図表3 行動特性区分と職務等級の対応関係(例:N4)能力区分N5N4N3N2N1例えば、N4の場合、職務等級10あるいは11の職務への配置を基本としますが、これ以外(例:職務等級12や9など)の職務への配置となることもあり得ます職務等級13121110987654321基本資料提供:川崎重工業株式会社

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