エルダー2021年12月号
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2021.1236ちなみに、この定年年齢の引上げは、職員の要望を受けて行ったものではなく、山本理事長が経営者として発案した。当然、人件費は増加することとなるが、業績が好調で財務体質も健全だったため、問題にはならなかった。定年が延長されたことで、60歳以降も、原則として59歳時点に担当していた役職、業務を継続することとなった。前述のように、ベテランの力を高く評価し、引き続き活躍を期待しているため、60歳で役職を外すという発想にはならなかった。その結果、いまでは、30代の支店長もいれば、60代の支店長や部長もいる状態となっている。山本理事長は、「ベテランと若手をミックスしてやっていくことが大事と考えていますが、それがいま、うまくかみ合っています」と評価している。これからも職員を大事にしてやりがいをもって働ける環境を築くコロナ禍となり、金融機関にとっては融資の判断がよりむずかしい時代になったといえる。しかし、山本理事長は、「いまは、大きなビジネスチャンスです。ほかの金融機関が躊躇してリスクテイクしないいまだからこそ、逃げてはいけないと考えています。これからの時代は、金融機関再編などいろいろなことがいわれています。アフター・コロナは、成長していく企業と脱落していく企業に分かれることも予想されますが、金融機関も同様に、成長していく金融機関と脱落していく金融機関に分かれるでしょう。金融機関も、今後はお客さまの厳しい目で評価されるようになります。しかし、そのなかでシシンヨーは必ず生き残っていきます」と話す。同組合は、今年度上期の決算でも過去最高益を更新し、来年3月の年度末決算にも過去最高益を見込んでいる。山本理事長は、「職員を大事にし、やるべきことをやってきたことで好循環が生まれ、過去最高益につながったととらえています」とこれまでの活動を評価する。そして、今後も、職員がやりがいを持って働ける環境を整えていく方針がブレることはない。「私の頭には、とにかく職員を大事にすることがあります。職員は財産です。『現場主義』で職員が困っていないかをみていき、職員を大事にしていく。それが当組合の業績一つひとつに反映されていきます。職員を大事にし、職員がモチベーションをもって働ける環境を用意すれば、必ず業績は上がります。大事なのは、役員が先頭に立っているか、現場を知っているか、パフォーマンスではなく現場で求められていることを徹底しているかです。きれいごとではなく、お客さまのため、職員のために取り組んでいけば、組織がおかしくなるわけがありません。また、3年、5年、10年したら、うちは一気に変わってくると思います。60代の職員も増えていきますし、その一方で若い職員にもチャンスを与えていく必要があります。そうやって、自分たちが思い切り働ける職場をつくり、みんなががんばってくれるシシンヨーになっていければと考えています。そうすれば、シシンヨーは必ず伸びていきます」と語る山本理事長の口調は力強い。他社の真似をするのではなく、自分たちが正しいと思ったやり方を信念をもって貫く、同組合の挑戦から目が離せない。

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