エルダー2021年12月号
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エルダー37FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫そばを食べて不老長寿そば好きは長生き今年の新そばは、香りも強くのど越しもさわやかです。割り箸をパチンと割って、新そばを手た繰ぐると、秋の深まりを感じます。「そば好きは長生き」ということわざがありますが、たしかに、そばには不老長寿の成分が豊富です。いかにもうまそうに、ニコニコしながらそばをかっこよく手繰っているのは、若い人よりも、年齢を刻んだご年輩の方が多いです。そばには血管の老化を防ぐというルチンが多く含まれていて、一食ごとに血管を若返らせているのかもしれません。ルチンには毛細血管を強化する作用があり、血液もサラサラになって、血流もよくなる働きをするといわれています。抗酸化成分のルチンには血圧の安定効果があることがわかっていますが、人間の記憶力をアップするという脳とのかかわり合いでも注目されています。そば湯も頂ちょう戴だいしましょうルチンの作用は、ビタミンCと一緒に摂ると強くなりますから、薬味として添えるネギやオオバ、ミツバ、大根おろしなどは、残さずに食べるとよいでしょう。ところがルチンは水溶性のために、そばを茹ゆでる湯のなかにどんどん溶け込んでしまいます。そば粉にはビタミンB1やB2などのB類が含まれているのですが、こちらも水溶性です。したがって、そば湯はルチンやビタミンB類の貴重な供給源になります。そばを食べ終わったら、そば湯をご馳走になりましょう。そばにはタンパク質が多く、白米のほぼ2倍で、穀類のなかではトップクラスです。そのうえ、食物繊維も多く、万病のもとといわれるお通じのとどこおりを防ぎます。昔は、定期的にそばを食べて、体内を清める「清めのそば」の習慣があり、毎月末に「晦みそ日かそば」と呼んで、家族そろって頂戴し、1カ月の無事を神に感謝しました。1年の終わりに食べるのが「年越しそば」で、この習慣はいまでも続いています。江戸時代の『本ほん朝ちょう食しょっ鑑かん』にも、そばの健康効果について、「よく胃腸の残りかす、とどこおりを下す」とあり、平安時代の『医い心しん方ほう』にも、「五臓の汚れたかすを清めて、洗い流す」とあります。免疫力の70%は腸にあり、ウイルスに負けない体力を維持するためにも役に立ちそうです。338

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