エルダー2021年12月号
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エルダー43最高年齢の平沢玲子さん(82歳)は、「宅幼老所わが家」で週4日、10時から14時まで利用者の食事の世話や洗濯物の収納などの仕事をしています。入社したのは2年前、80歳のときでした。以前は縫製の仕事をしていて、介護の仕事は未経験でしたが、「また外へ出て働いてみたいと思い仕事を探しているなかで、こちらで面接してもらえることになり、職場見学もして働けることになりました。うれしかったです」と満面の笑みで話す平沢さん。「年齢を感じさせず、よく気がつき適応力が高いこと」が採用の決め手だったそうです。平沢さんは、「自分でも役に立てることがあるならと思い、入社しました。心がけているのは、利用者の方々に心地よく過ごしてもらうこと。ですが、みなさんから『元気ね』、『若いわね』といっていただき、私のほうが元気をいただいています」と明るく話してくれました。柘つ植げ幸さち子こさん(71歳)は、製造業の会社を60歳で定年退職後、ハローワークで介護職員初任者研修を受けて修了し、わが家に入社して11年になります。入社後は訪問介護で活躍し、6年前から「宅幼老所あずま家」に勤務。70歳定年後は、パート社員として月10〜13日間、9時から15時30分まで入浴や食事の介助を行っています。「利用者の方々からいろいろなことを教えていただける職場ですし、若い人とも話ができて刺激をもらえます。また、職場のみなさんに支えられ、母の介護をしながら働くことができました。母を亡くしてからも、『一緒にまた働こうよ』とみなさんが誘ってくださって、いまがあります。会社にもみなさんにも感謝しています。いつまでも、ここで働きたいと思っています」と笑顔で話す柘植さん。大石社長も「柘植さんは責任感の強い人です。お母さまの介護をするようになってから、勤務時間を短く調整して仕事を続けていました」と、信頼をよせています。地域のなかで多様な働き方を発信同社には施設の利用者のつながりなどを通じて応募してくれる人たちが多く、採用に至っているといいます。渡部プランナーは、「理念や、年齢にこだわりのない企業であることをさらにアピールした募集をすること」をアドバイスしました。また、「当機構の高年齢者活躍企業コンテストなどへの参加を通じて、社会に認識してもらうことも大切」と提案し、令和2年度のコンテスト※2に応募して当機構理事長表彰特別賞を受賞しました。高齢社員には、「細く、長く仕事を続けてください」と大石社長は話しているそうで、今後の課題として「健康管理」をあげました。同社が目ざしているのは、「地域密着で事業を継続し、地域のなかで雇用を生み出し、循環していくこと」と大石社長。高齢者の活力をこれからも大事にして、高齢社員の長所を活かし、個々の事情などによりそい、柔軟な働き方に対応していくと語ります。短日・短時間勤務をはじめ、宿直業務のみや、若い社員が働きづらい時間帯をカバーして朝4時間と夕方4時間で働く高齢社員もいるとのこと。多様な働き方があり雇用管理がたいへんと話しますが、「いろいろな働き方の事例を発信し、元気な高齢者の方々にこれからも柔軟に仕事を担当していただきたいと考えています」と大石社長。渡部プランナーは「小さな村の企業ですが、同社の理念や多様な働き方の事例は、全国の同様の施設のモデルになるものと思います」と話していました。 (取材・増山美智子)利用者と楽しそうにお供え餅をつくる柘植幸子さん※2 令和2年度時の名称は「高年齢者雇用開発コンテスト」

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