エルダー2021年12月号
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エルダー47り組むことで、歩行時のふらつきや左右差が改善し、転倒に関連する体力指標にも改善が認められています(図表2)。エイジフレンドリーな職場づくりのために4本連載では、エイジフレンドリーな職場づくりをテーマに掲げ、これまで、高齢者の労働災害発生率の高さなどエイジフレンドリーな職場づくりが必要な理由、国における高齢者の労働安全衛生行政施策として、2020年3月に厚生労働省が発表した「エイジフレンドリーガイドライン」の概要、高齢者に頻発している労働災害として、転倒、腰痛、切創、墜落・転落等災害の事例と、その発生原因と労働災害防止対策を示し、そして最終回の今回は、大手企業の取組み事例などを紹介してきました。大手企業の取組み事例では、体力維持、健康づくり、職場体操などを紹介しましたが、エイジフレンドリーガイドラインが示す新たな視点〝高齢者一人ひとりの健康や体力の状況に応じた対策〞に精力的に取り組んでいる企業は、残念ながらまだ多くありません。この点は、人生100年時代に向けた今後の大きな課題です。高齢者には、加齢により心身機能が大きく低下し、それにより被災しやすくなることを自覚してもらわなければなりません。例えば、つまずいても手をつけず、そのまま、顔、肩、腕から転倒するなど、とっさにうまく動けずに骨折などの重傷になります。高齢者に自覚をうながす取組みは職場の安全管理責任者の務めです。また、身体機能が低下する高齢者にはパワーアシストスーツが推奨されます。作業による過度な負担は、疲労回復力が低下している高齢者には大きな課題です。また、疲労による注意力、集中力、判断力の低下はヒューマンエラー災害につながります。現在、防衛省においても、災害救助などでの自衛隊員の負担軽減を図るため、専用のパワーアシストスーツ(高機動パワードスーツ)の開発を進めるなど、働く人の負担軽減策は重要な課題となっています。人生100年時代を迎え、高齢者がいつまでも活き活きと元気で健康に働くためには、職場環境改善、作業内容の見直し、職場体操、体力チェックなどを積極的に進める必要があります。それは、わが国の深刻な人手不足問題の解消につながるとともに、高齢者が活き活きと働く姿が社会にあふれることは、わが国に大きな活力をもたらすでしょう。パワーアシストスーツを着用して働く高齢者の例資料提供:マイクロストーン株式会社図表2 マイクロストーン社「THE WALKINGⓇ」(転倒リスク歩行健診システム)の診断画面高齢社員のための安全職場づくり―エイジフレンドリーな職場をつくる―

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