エルダー2021年12月号
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用者が期待させている更新の内容(一般の事務職員としての更新)と労働者が期待している更新の内容(事務局長としての更新)にズレが生じていることを理由として、期待可能性を否定している点が重要です。同様の事案は例が少なく、労働契約法第19条第2号が定める合理的な期待という点に関する理解を深をくり返している者がおり、どうにかできないか」といった相談を受けることがあります。労働基準法に違反しているので是正すべきだ、といった批判で実際に適法に運用できていない企業もあるなど、正直なところその批める内容であると考えられます。なお、定年が近かったことを合理的な期待を有することの背景事情として重視している点は、高齢者雇用に特有の要素でもあり、本件のような事情がない場合には、十分に考慮しつつ、契約更新を検討する必要があるでしょう。判が的確な場合もあり、そのような場合は就業環境や労働条件を適正化する方が先決であり、当該従業員を処分することが適切ではないときもあります。他方で、批判の内容が、邪推や憶測に基づく内容である場合や、相性が悪い上司に対する人格非難であることもあります。この場合には、企業秩序を乱すおそれがあるうえ、人格非難の程度によってはパワーハラスメントの被害者となる労働者が現れるおそれすらあるといえます。このような事態に至っては、使用者にも被害者に対する安全配慮義務があるため、このような行為を止めるためにいかなる措置を取ることができるのかを検討し、実行していく必要があります。労働者には、労働時間中、職務に専念する義務があり、原則として使用者の指揮命令に従った労務の提供に集中する義務があります。したがって、問題があるようなメールを送信しているような場合には、就業規則を確認する必要はありますが、職務専念義務違反である以上、懲戒処分の対象とすることができることが多いでしょう。しかしながら、悩みは懲戒処分が可能であるか否かよりも、適切な処分の程度を決定することにあります。特に、このような解雇に相当するとはいえないような場合にどのような対応を進めていくのかについては、正解が職務専念義務について1ご相談に来られる企業から、「社内でメールや同僚同士のチャットを通じて、会社批判類似の事例において、口頭での厳重注意後、再度違反した際には出勤停止5日間を有効とした裁判例があるため、参考にしつつ処分を検討することが適切です。なお、解雇が有効になる余地はほとんどないでしょう。A社内メールを使って、会社や上司を批判している社員の処分について知りたい労働時間中に社内メールを用いて、会社に対する批判および上司や同僚を揶や揄ゆするメールを送信するなどしている者がいます。社内の秩序を乱しており、職務に専念しているとも思われないため、懲戒などの対応が必要ではないかと考えていますが、どのような処分であれば可能でしょうか。解雇することは可能でしょうか。Q22021.1250

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