エルダー2021年12月号
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■■■■■■■■人事用語辞典いまさら聞けないエルダー55提として法律、特に労働基準法を遵守した内容でないといけません。例えば前回(11月号)で解説したように、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を必ず付与しなければならないと労働基準法上定められていますが、当社は業務過多なので休日を付与しない月があるといったような定めをして就業規則に記載したところで無効となります。逆に、週休2日や夏季休暇を付与する旨を記載するなど、法律以上に労働者に有利になる内容を記載することは問題ありません。就業規則に記載すべき内容についても労働基準法上で定められています。必ず記載しなければならない絶対的必要記載事項と、当該事業場で定めをする場合には記載しなければならない相対的必要記載事項に分かれます。これらの概要については図表をご確認ください。新たに就業規則を作成する際や自社の就業規則の内容が正しいかどうか判断に迷う場合には、モデル就業規則(2021(令和3)年4月 厚生労働省労働基準局)の活用をおすすめします。各記載事項についての文例とその解説がていねいに記載されています。また、決めごとにより内容が分かれるものについては、複数例が列記されています。例えば高齢者雇用については、﹇例1﹈定年を70歳とする例、﹇例2﹈定年を65歳とし、その後希望者を継続雇用とする例といったように複数例示されています。就業規則にすべての内容を記載すると量が膨大になる場合や、テーマごとに分けたほうが周知や管理しやすい場合には、別の規程として切り出すことができます。賃金規程や育児・介護休業規程などが代表的ですが、名称が異なっても就業規則と同様の扱いとなります。また、パートタイムやアルバイトなど、雇用形態の違いにより労働条件が異なる場合には、それぞれの労働者が適用される就業規則を作成・届出する必要があります。就業規則は非常に重要冒頭で就業規則は「非常に重要な存在」と書きましたが、法律で定められているからだけではありません。一つは就業規則の記載と周知をしっかり行うことにより使用者・労働者間のトラブルの防止につながる点です。例えば、定年後再雇用では労働時間や給与水準が定年前と異なる場合がありますが、定年後再雇用規程を作成し理解を求めれば、処遇に関する認識の違いを埋めることができます。もう一つは、就業規則を見直すことで労働者の労働環境の向上につながる点です。働き方改革により労働時間の短縮や就業場所の多様化などを検討している企業が多くありますが、就業規則を変更することで実現が可能となります。何年も就業規則を見直していないという企業もありますが、2020年6月1日より職場におけるパワーハラスメント対策が義務化され、その方針や対策について就業規則に記載するなど書面での周知の必要が生じるなど時代により求められる記載内容も変化しています。定期的に社会保険労務士などの専門家を交えながら内容を検証、更新していくことも重要な取組みです。次回は「ワークシェアリング」について取り上げます。出典:厚生労働省 「リーフレットシリーズ労基法89条」図表  就業規則に記載すべき内容絶対的必要記載事項1 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに交替制の場合には就業時転換に関する事項2 賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項3 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)1 退職手当に関する事項2 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項3 食費、作業用品などの負担に関する事項4 安全衛生に関する事項5 職業訓練に関する事項6 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項7 表彰、制裁に関する事項8 その他全労働者に適用される事項相対的必要記載事項

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