エルダー2022年1月号
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2022.18ていくことが現実的になると思われます。つまり、晩年のキャリア形成の通過点であるわけです。したがって、キャリア・チェンジはごくあたり前のことであるともいえます。また、高齢期になれば、働く目的や就労動機も現役時代とは変容していきます。このため、キャリア・チェンジは職業生活と密接不可分の関係であり、雇用環境の変化への対応と職業寿命を延ばすためという意義があると思います。キャリア・チェンジについては、現役時代にも社内の異動や転勤、出向などで一定の経験をしている方も少なくないと思います。問題はそれらをどのように受けとめ、新しい職業経験として職務拡大・充実につなげていくかです。晩年のキャリアの充実のためには、職業能力のアップデート※とキャリア・チェンジを恐れない気持ちも必要ではないでしょうか。キャリア・チェンジの成功のため意識的な経験の蓄積を―自律的にキャリアを考え、キャリア・チェンジに備えるには、どのように、いつから取り組めばよいのでしょうか。高平 少なくとも40代ごろから、大まかでよいので、人生設計を考えておくことが大事です。経済的なプランも含めた人生の設計図をつくり、各年齢に達したときや、キャリアの節目に見直しや修正をほどこす。その都度点検しながら、軌道修正を行って自分の職業人生を客観的に俯瞰してみることが参考になると思います。人生設計というと大げさに感じるかもしれませんが、小さな目標やゴールを設定して楽しむくらいの感覚でもよいと思います。それで見直す作業が続けられたら理想的でしょう。キャリアの不確実性はますます高まっています。自己のキャリアをいかに防衛するかという視座をもちながら、自分がどうありたいか、中長期のビジョンを考え日々を過ごせば、いざというときに慌てないですむのではないでしょうか。あわせて、折々に「学び」を職業生活に組み入れると将来のキャリア・チェンジに役立つと思います。特に利害関係のない学びを通じた社外人脈は貴重な個人財産になるでしょう。―キャリア・チェンジをうまく進めるためには、どんなことが必要でしょうか。新しい仕事自体は改めて学ぶとしても、キャリアを展開するための土台となるコアが重要だと思いますが、いかがでしょうか。高平 どのような仕事でも、職業能力の基礎的な部分は共通だと思います。仕事の進め方や情報処理の扱い、キャッチアップの仕方などはもちろんのこと、人との関係性の構築も大きな要素の一つです。このような持ち運びができるポータブルなスキル部分と環境変化への適応力、それに人間的な魅力も重なれば、キャリア・チェンジは怖くないのではないでしょうか。職業能力のコアは、職業キャリアの節目に起こる転勤や異動、出向などがきっかけとなって、蓄積され、形づくられるものです。環境が変わり、さまざまな課題に取り組まざるを得なくなったとき、その失敗も成功も自分の力に変えることができるかどうかが重要です。つまり、苦労を成長の糧にできるマインドをもつこと。このようなコアのある人材ならば、職種が変わろうと業界が変わろうと、あまり関係ないと思います。※  職業能力のアップデート……古くなった知識を学習棄却し新しい知識や経験を積んでいくこと高平ゆかり氏

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