エルダー2022年1月号
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2022.110て楽しく役割を認識し、縁の下の力持ち的存在になれる人です。例えば、未経験の分野であっても好奇心をもって取り組める人は、受け入れる側からすると、自分たちの仕事に関心をもってくれたと心理的に歓迎されると思います。 他方で、新たな職場にうまく移行できないシニア人材は、気持ちの切替ができず、古巣の価値観やモノの見方から離れられない人です。私は現在、深刻な社会課題とされている中小企業の事業承継問題にシニア人材の活用を促進する活動にかかわっています。具体的には、Yamatoさわかみ事業承継機構が取り組んでいる5000社承継プロジェクトへ、企業出身者を事業承継先の後継社長や他技術専門職などとして、キャリア・チェンジする取組みです。定年前後のシニアの方々がキャリア・チェンジを考えるとき、多くの方が、次はより「社会の役に立つ仕事がしたい」とおっしゃいます。事業承継問題にかぎらず、社会貢献を兼ねたソーシャルビジネスへのキャリア・チェンジは、これからのシニア人材にとってやりがいのある魅力的な選択肢になると思います。ソーシャルビジネスにおいては、経済合理性や利益優先のビジネスではないだけに、より人間性や人柄、事業や仕事に対する貢献意欲の高い方がキャリア・チェンジに成功するのではないかと思います。えることも重要です。シニア人材にとって一番知りたいことであり、本人なりの納得性が高まれば、想定外の貢献をもたらしてくれることもあるからです。シニア人材の心理に配慮することは、シニア人材活用のポイントといえます。もちろん、「ダメなものはダメ」と率直に伝えることも当然ながら必要です。シニア人材がよかれと思ってしたことが、周囲にとって迷惑にならないよう、お互いのコミュニケーションを欠かさないようにすることは、いうまでもありません。現役世代もシニアも苦手意識をもたずに自然体で接することが望ましいですね。仕事の能力と並んで人間的な魅力も重要となる―会社を変わるキャリア・チェンジで、うまく移行できるシニア社員とは、どのような方でしょうか。高平 一言でいうと「人間的に魅力的な人」ですね。実はあまりキャリアには関係ない気がします。知識や技術をもっているに越したことはありませんが、周りの人との接し方や仕事の進め方にも人柄が滲んできます。新たな職場で受け入れられにくい人とすぐに馴染んで適応する人がいますが、うまく移行できるシニア人材とは、仕事をきちんとこなしたうえで、一緒にいるべきなのは、会社側ではなく、むしろシニア社員の方だと思います。もしかしたら、そのタイミングは60歳になるかもしれませんし、それ以前かもしれません。つまり、あと20年職業寿命を延ばそうと思えば、キャリア・チェンジは不可避で、会社まかせにせず、自らのキャリアを戦略的に考えたいものです。―企業を変わって働くシニアも出てくるということは、新たに外からシニア社員を迎える企業もあるということです。そういう企業が、セカンドキャリアのシニア社員を迎えるにあたって、どのような取組みをすれば、より有効にシニア人材を活用することができるでしょうか。高平 まず、受入れ体制をきちんと整備することではないでしょうか。「自分の入社を社内に知らされていなかった」といった些細な連絡ミスでも、シニア人材のなかには心理的にネガティブに受けとめてしまう人もいます。「そんなことで」と思うかもしれませんが、せっかく採用した人材です。その人に最大限に力を発揮してもらうためにも一定の受入れ体制は必須です。例えば、従事する予定の職務内容や期待する役割、当面の目標について共有したり、権限についても具体的に初めから伝えておいた方がよいでしょう。また、今回の採用を「何のために」行い、「なぜあなたを採用したのか」などを伝

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