エルダー2022年1月号
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2022.114ロワーとして振る舞う姿勢が大事になるのです。一方、シニアの働く場を広げていくには、企業の側の意識改革も必要になります。「『シニアは使えない』という先入観がまだあるように思います。思っている以上にシニアのみなさんは元気ですし、間口を広げてほしいですね。例えばテレワークと同じで、当初はむずかしいと思っていても、新型コロナウイルス感染症の感染拡大でテレワークが拡がったように、シニアについても労働力としてどう使いこなしていくかを考える意識の変革が求められていると思います。そのうえで、週3日勤務やそれに応じた仕事の切り出し方などを工夫すればうまくいくのではないでしょうか」(佐藤氏)同様に弘中氏も「シニアから応募があったら『65歳以上だから切る』という時代ではありません。面接してもらえば、『こんな人がうちの会社にいたらいいな』と思う人が絶対にいるはずです。そうしたチャンスを逃すことがないように年齢に関係なく門戸を広げてほしい」と話します。東京セカンドキャリア塾での学びやキャリア・トライアルの実践がシニアの働く意欲を高め、就業機会の拡大に向けて着実に前進しています。か派遣就業できていないという現実もあります。高齢求職者と企業にどういう課題があるのでしょうか。まず求職者の課題として佐藤氏は次のように指摘します。「華々しい職務経歴をもっていても、能力の棚卸しができていないために実際のアウトプットがうまくできない人もいます。現役時代に意識してこなかった“自分の能力”を可視化するというシニアの側の取組みも重要です。また、見栄えがよくて若々しく振る舞える人や謙虚な姿勢を保てる人は、比較的就業先が決まりやすいといえるでしょう。受け入れる企業としては、率先して事業の中核の仕事をしてほしいというわけではありません。若い社員がいるなかで、仕事のサポーターとしてうまく振る舞ってほしいというのが企業の本音だと思います。シニアのみなさんには、『経験を活かして、いかに周りをサポートしていくかを考えてほしい』とお伝えしています。その点、セカンドキャリア塾で学んだ人のほうが決まる率は高いと思います」東京セカンドキャリア塾の塾生には、大手企業の管理職を経験した人も少なくありません。改めてスキル・経験などの能力を可視化し、求職先の企業に伝えられること、加えて、あくまで新入社員としての謙虚さを保ち、周囲のフォずかしい、あるいは幅広い経験をもつ中堅層が少ないところも多く、受け入れてもらいやすいという点もあります」(弘中氏)派遣就業者の働き方としては、週2~3日勤務が多く、賃金は時給1200~1300円を設定しています。また、派遣就業後に直接雇用に結びついた人は派遣就業者の30%程度。雇用形態は正社員だけではなく、パート勤務などの契約社員も含まれ、処遇は企業ごとに異なります。なかには直接雇用後、自分がつちかってきた能力を開花させる人もいるそうです。「長年百貨店勤務をされてきた人が、就職先でカスタマー対応の品質管理統括で仕事をしています。百貨店勤務といえば販売経験だけと思いがちですが、見方を変えれば“顧客対応のプロ”です。まったく異なる分野でも、経験を活かしてチャレンジする道もあります」(佐藤氏)同様に前職が飲食業の衛生管理担当だった人がIT企業で直接雇用になり、飲食店向けの衛生管理のアプリ開発に従事している事例もあります。シニアに求められるのは自分の能力を可視化すること一方、企業にとっては派遣就業期の負担がないというメリットがあっても、登録者の半分し

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