エルダー2022年1月号
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2022.120たことをその都度、関係者と話し合って決め、業者への発注や収支管理も行う。広報も担当し、啓発活動や寄付の呼びかけもしなければならない。広報活動については取材する側として30年のキャリアがあるものの、事務の仕事は不慣れだった内多さん。徐々にこの仕事のたいへんさを、身に染みて感じることになる。「しばらく怒られる経験がなかったので、心が折れかけました」という。しかし、1年も経つと大体サイクルがわかり、パソコンのスキルも向上して、先回りして準備ができるようになった。新しいことに取り組むのが好きな内多さんは、例えば啓発活動のイベントも、毎回、タイムリーで役立つテーマを企画する。「病院の外から私を招いてくれたということは、病院の文化と違うものを期待されているわけです。その期待に応えることを忘れてはいけないと考えています。施設長は『どんどんやれ』といってくれるので、自分の仕事を自分で広げていくことができます」と意気込みを語る。この仕事の一番のやりがいは、利用者にダイレクトに喜んでもらえること。「こういう施設を待ち望んでいた」と感謝されることも多く、「この施設をしっかりと維持していかなければ」という使命感がさらに高まる。今後は、もみじの家のような支援の仕組みを全国に広めていくことが目標だ。取組みはすでに始めており、内多さんが中心となって、47都道府県のネットワークができつつある。2021(令和3)年度末には任意団体を立ち上げ、全国で、医療的ケア児者やその家族が安心して地域で暮らせる環境づくりを進めていく。内多さんの定年は60歳になった年の年度末。延長規定もあるが、まずは定年を一区切りとして、そこまでの2年余りで何ができるかを考えはじめている。「たいへんなこともたくさんありますが、違う人生を経験できると思うとわくわくします」と前向きだ。自分をわかりやすく伝え自分が落ち着ける居場所を見つける内多さんにキャリアチェンジを成功させる秘訣をうかがうと、「秘訣はわかりませんが、結果的によかったと思うのは、自分の考えを周りの人にわかりやすく伝えてきたことです」という答えをいただいた。障害福祉に関心があり、ライフワークとして真剣に取り組んでいることが信頼できる相手に伝わっていたからこそ、内多さんはいまの仕事をすすめてもらえた。「私のことを理解してくれていなかったら、その方は、別の人にこの仕事をすすめていたかもしれません」という言葉には実感がこもっている。また、「私は支援が必要な人の役に立ちたいという気持ちでやっていますが、肩ひじを張らなくてもよいと思います。自分が落ち着ける居場所を見つけることが一番です。私も、ここにいると安らぐからここにいるのです。例えば、『この人はガーデニングが好き』と周りの人に伝わっていれば、その情報が入ってくる可能性が広がります。そうやって自分の居場所と感じるものに出会ったら、一度そこに飛び込んでみてください。やってみてうまくいかなかったら、また違う場所を見つけていけばよいのですから」とアドバイスする。「自分の居場所」を見つけて活躍する内多さんの笑顔は、まぶしいくらいに輝いていた。※「もみじの家」では、みなさまのご寄付を受けつけています。詳しくは、ホームページ(https://home-from-home.jp/)をご覧ください

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