エルダー2022年1月号
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2022.126か、高年齢者の就労意向も変化し、収入をともなう就業希望年齢についてみると※1、約2割が「働けるうちはいつまででも」と回答し、約4割が65歳を超えての就業を望んでいます。あわせて約6割が、65歳を超えて、または働けるかぎり働きたいと思っているのです。70歳までの就業確保(努力義務)とはこのように高年齢者像が変化しているなか、高年齢者の多様なニーズに応えられるさまざまな選択肢を準備する必要があるのではないか、そういった問題意識から新設されたのが、今回の法改正により努力義務とされた70歳までの就業確保措置です。この法改正では、多様な選択肢を法制度上で整えています。まず、①70歳までの定年引上げ、②定年制の廃止、③70歳までの継続雇用制度の導入。この三つは、雇用関係のなかで70歳までの就業確保をしていただくものです。加えて、雇用によらない措置を新たに設けました。それが、④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入、⑤70歳まで継続的に社会貢献事業に従事する制度の導入です。④と⑤は、雇用関係ではないなかで70歳までの就業機会を確保していただくもので、「創業支援等措置」と呼んでいます。なお、③70歳までの継続雇用制度は、65歳以降70歳未満までは特殊関係事業主※2に加えて、他社で継続雇用を行うことも可能です。また、⑤の社会貢献事業に継続的に従事できる制度の導入は、(a)事業主が自ら実施する社会貢献事業と、(b)事業主が委託・出資などをする団体が行う社会貢献事業があり、この(a)、(b)いずれかに従事できる制度を導入していただくものです。いずれの場合も、有償のもの※3にかぎるとされています。社会貢献事業とは、不特定かつ多数の者の利益に資することを目的とした事業で、事業の内容等を勘案して個別に判断されますが、広く公益に資する事業であれば認められることとなります。自社以外の団体が行う社会貢献事業に従事する契約を結ぶことも対象としており、その場合、自社から団体に対して事業の運営に対する出資(寄付などを含む)や事務スペースの提供など、社会貢献活動の実施に必要な援助を行っていることが求められます。今回の改正法のポイントは、66歳から70歳までの就業確保措置には、雇用以外の対応も含まれることと、自社以外での就業の継続も含まれることです。留意事項として、④と⑤の創業支援等措置は雇用によらない措置ですので、労働関係法令の適用がありません。しかし、労働関係法令の考え方に照らし、必要な配慮をしていただくことが必要となります。高年齢者が地域社会を支える存在に日本は人口が減少し、生産年齢人口の割合も下がっており、地方や小さい町ほどその減り方は激しくなっています。地域の活力や文化の維持を考えると、企業内での雇用にとどまらず、地域の活動に高年齢者が活躍する環境を構築していくことが、地方創生の観点からもたいへん重要ではないかと考えます。現時点での企業の対応は、雇用による措置が中心ですが、並行して創業支援等措置、特に、社会貢献事業における活用が普及していけば、より多様な形態での就業・社会参加が可能になり、地域社会の持続力の下支えともなります。そのためには、企業だけでなく、地域に存在する多くの社会資源との有機的な連携が不可欠です。そして、企業や地域における多様な実践の蓄積が、よりよい制度や社会づくりの基盤となると考えます。70歳までの就業確保措置は努力義務ですが、事業主のみなさまの取組みの蓄積が、より求められる領域ではないかと思います。引き続き、創意工夫のある取組みの展開をお願いいたします。※1 内閣府「令和元年度 高齢者の経済生活に関する調査」 (注)60歳以上の男女を対象とした調査※2 特殊関係事業主……元の事業主のグループ会社のこと※3 業務に従事することにより、高年齢者に金銭が支払われるもの

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