エルダー2022年1月号
31/68

エルダー29新春特別企画生涯現役社会の実現に向けたシンポジウム人口の減少は確実に起こることです。最後の七つめの特徴は、「高齢者雇用は若者の雇用を奪うのではないかという議論があること」です。これまでの研究成果では、両方の可能性が指摘されています。例えば、単純な要員管理をしている職場で、20人が働く生産ラインがあり、1人が定年を迎えたとします。この人が継続雇用でその後も働き続けると、ポストが空かないので若者は入れません。しかし、技術や能力を重視しているような職場であれば、過去の商品を使用している取引先を高齢者がサポートし、若者は最新の技術を組み込んだ商品に対応することで、両者は競合せず補完関係にあるといえます。日本の将来を考えると、補完し合う場面を多くしていく必要があるように思います。少子化によって労働力人口が減少していくなかで日本の経済力を維持するには、高齢者にできるだけ長く働いてもらう必要があります。そこで重要になるのが、継続的な能力開発です。20歳前後で職業人生を開始し、10年ほどで得意分野を確立して、65歳から70歳ごろまで働き続けるとすると、50歳時点で一度、能力の棚卸しをするのがよいと思います。50歳ごろになると、小さな字が見えにくくなってきて、「自分も年かな」と自覚します。そんなときに棚卸しを行い、60歳以降の生き方を考えてもらうのです(図表1)。ポイントは継続的な能力開発﹁くれない族﹂防止10箇条とは最後に、「くれない族」防止10箇条をお伝えします。10の項目を、人事部、社員本人、両者が共通して取り組む活動の三つに分けています(図表2)。この10項目を実施すると、「くれない族」にしない、させない、ならない、が実現できると思います。参考として、2015年制作のアメリカ映画﹃マイ・インターン﹄を紹介したいと思います。悠々自適の生活をしているものの、虚しさを感じている70歳の男性が、シニア・インターン制度によって新人として働き始めるというストーリーです。先ほどの10箇条のうち、社員が取り組む六つの活動を意識しながら観てください。すでにご覧になった方もこの六つの活動を意識してもう一度ご覧になると、高齢期にどのような働き方をして、どのような行動を取ることがよいのか、多くのヒントが得られると思います。※シンポジウム資料より作成図表1 職業人生45年を乗り切る能力開発※筆者作成図表2 「くれない族」防止10箇条A 人事部が取り組む活動・議論の場をつくる・50歳到達時の振り返り研修・能力のアップデートを促す仕組みB 社員が取り組む活動・新しいことに挑戦し続ける・頼まれたことは何でも引き受ける・自ら仕事をみつけて動く・昔の話は聞かれないかぎりしない・自分のスタイルを大切にする・身ぎれいにしているC 両者共通の取組み課題・決めつけず、個々人に注目する〈必要な支援〉 1企業による教育訓練の継続企業は、50歳を過ぎた従業員への訓練に消極的になる。それでは65歳まで第一線で活躍することは難しい。企業の訓練意欲を高める方策が必要。 2従業員本人のキャリア開発意欲の維持キャリア開発とは「売れる能力を維持すること」。従業員が「売れる能力」を予測しながら、自らの能力開発に励むインセンティブを用意する必要がある。継続的なキャリア開発(売れる能力を維持すること)が大切20歳頃50歳60歳65~70歳得意分野の確立職業人生のスタート能力の棚卸し能力の棚卸し現在の定年年齢賃労働からの引退賃労働からの引退30歳頃昇進・昇格 管理的職務 キャリアチェンジ

元のページ  ../index.html#31

このブックを見る