エルダー2022年1月号
46/68

ところ、60~74歳の各年齢層で、就業率が高まってきていることがわかります。さらに、シニアは、長く働くことを希望しています。働いていない者を含む60歳以上の男女のうち、2割強の者が、働けるうちは﹁いつまでも働きたい」と回答し、﹁70歳くらいまで」もしくはそれ以上との回答と合計すれば、約6割が長く働きたいという意欲を持っています(図表2)。ところでシニアとは3と、ここまで、﹁シニア」という言葉を使ってきましたが、﹁シニア」というと、みなさんは、何歳くらいの人を思い浮かべるでしょうか。シニアについて、明確な定義はありません。何歳から﹁シニア」と呼ぶかは、職場でのシニアなのか、地域でのシニアなのかなど、場面によって異なります。高齢化の進展とともに、シニアといわれて思い浮かべる年齢は上がっています。また、聞かれた人の年齢が高いほど、シニアといわれて思い浮かべる年齢は高い傾向にあります。企業ではどうか、というと、私が聞いたかぎりでは、55歳が多く、50歳からと答える人もいました。その下のミドルと一緒にして、﹁ミドル・シニア」といういい方をすることもあります。ちなみに、高年齢者雇用安定法では、施策などの関係から、高年齢者を﹁55歳以上」と定義しています。人材紹介会社など人材ビジネスの業界でも、55歳が一つの区切りとなっていることが多いようです。世の中全体をみると、65歳以降を高齢者として扱うことが多く、それでも若すぎるといった意見もありますが、職場では、それよりもかなり若い段階から、﹁シニア」扱いすることが多いようです。しかし、職場で働く人の年齢は上がってきています。国税庁の調査によると、1年を通じて企業で働いている人の平均年齢は徐々に上がり、いまや46・8歳となっています(図表3)。仮にシニアを55歳以上とすると、シニアは働き手の3割以上を占めてしまいます(図表4)。職場では、シニアを意識するようになってからがとても長く、かつ、シニアの仲間はもちろん、シニアのより先輩も非常に多い、ということがわかります。会社によっては、50歳を超えるあたりから役職定年などもみえてきて、﹁シニア」扱いすることもあるようですが、そこから、﹁シニアだから⋮⋮」ということで、十分に力を発揮してもらえなくなっては、仕事が回らなくなる可能性があります。シニアは、働く期間だけでなく、体力的にも若くなっています。図表5は、65歳以上の男女の新体力テストのスコアを示したものですが、各年齢層とも、20年前に比べて、5歳以上若返っていることがわかります。キャリア理論でみたシニア4働く人の割合が増え、より長く働くことを希望し、肉体的にも以前に比べて若々しいシニアですが、キャリア理論の世界では、シニアはどのようにとらえられているのでしょうか。キャリアについては、たくさんの理論がありますが、大きく、個人の側からみるものと、組織の側からみるものに分けられます。個人の側からみるものは、さらに、﹁何を選択するか」、﹁どう選択するか」という選択の観点のものと、﹁どのようにキャリアを発達させていくのか」という発達の観点のものに分けられます。この発達の観点の理論は、職業選択のプロセスを発達的にとらえるところから始まりました。職業的発達理論を提唱したのは、エコノミストであったエリ・ギンズバーグですが、彼は、﹁職業選択は、長期の発達的なプロセスであり、そのプロセスは後戻りしないものだ」としました。また、﹁個人の欲求と現実の折り合いをつ2022.144

元のページ  ../index.html#46

このブックを見る