エルダー2022年1月号
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エルダー3ムとの関連です。例えば「高齢者の大多数は認知症になる」といったように、高齢者に関するネガティブな知識ばかりをもっている人が多い。国際比較研究でも、日本の若者は海外と比べて加齢に関する事実を知らないという結果が出ています。知らないと高齢者に対する偏見・差別が生まれます。年を取るということが実際にどういうことなのかという情報提供など、特に教育にたずさわる人たちが高齢者の正しい知識を教えていく必要があることを示唆しています。―若者の老後についての不安解消と、高齢者に対する知識をもつことが重要ということですね。逆に、高齢者の若者に対する偏見・差別もみられるのでしょうか。原田 生活満足度の低い人の不満が若者に向けられることはありません。ただ新たな発見として、自分がもつ経験や知識を若者に伝えたいという「世代継承性」の強い人ほど、若者に対するかたよった見方をしている傾向があることがわかりました。経験や知識を伝えたいが「最近の若者は粘りが足りない」といったステレオタイプ的な見方をしてしまうのです。地域や職場でも若者との接触を回避することはなく、自分の技能を伝えたいが、つい余計な一言をいってしまう。これは、結果的に世代継承を阻害してしまう可能性があります。 また、この関連では、高齢者が若者に何かを教えても、感謝の言葉などポジティブなフィードバックがなければ不満を覚えるという社会心理学分野での実験結果もあります。これは地域社会や職場でも同じでしょう。若者は教えてくれる高齢者に、一言でも感謝のフィードバックをすることが大事でしょう。―職場において、高齢者と若者がよい関係を築き就業に対する満足度を高めるために、企業にはどういう取組みが必要でしょうか。原田 中高年就業者を対象にした職場環境とメンタルヘルスの調査では、職場でエイジズが高い人ほど高齢者に対する偏見・差別が強い傾向にあることがわかりました。自分が置かれている生活環境に対する不満やフラストレーションが自分と無関係な高齢者に向けられる。海外の研究でも若者の失業率が高いと、「高齢者は就業面でも過剰に保護されている」という批判が起きるなど、世代間対立を生むとされていますが、日本でも若者の不満とエイジズムに関連があり、世代間対立が生まれる可能性があるのです。 もう一つは高齢者に関する知識とエイジズ教えてくれる高齢者に〝感謝〞のフィードバックを

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