エルダー2022年1月号
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果、視力が著しく低下したという事故に関して、被害者から、自治体に対して、安全配慮義務違反を理由として損害賠償請求が行われた事案があります(千葉地裁佐倉支部平成11年2月17日判決。なお、控訴審である東京高裁平成11年6月30日判決において結論は維持されました)。当該裁判例においては、「被告とテニス連盟ないし原告ら講師との法律関係は、本来、本人からの独立性と裁量性を有する準委任であると解されるが、その場合でも具体的な労務の内容、指揮監督関係、専属関係の有無等を考慮し、被告と原告間に使用従属関係が認められる場合には安全配慮義務違反が問題となる余地がある」という判断基準を示しており、準委任(≒業務委託)関係においても、安全配慮義務を負担する可能性があることを肯定しています。結論的には、指導方法を委託先に一任し、練習方法や内容に関与しないなど個別具体的な指揮監督などがないことから、関係性が雇用契約類似に至っていなかったとして、安全配慮義務を負担しないと判断しています。ここでポイントとなっているのは、やはり雇用契約類似の指揮監督関係がなかったことです。業務委託と雇用の関係の区別に関しては、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(37号告示と呼ばれています)が参考になります。65歳以降職能資格制度と職務等級制度1職能資格制度とは、労働者の「能力」に着目して賃金制度を設計するものであり、日本では多くの企業がこちらの制度を採用しています。ここでいう「能力」とは、当該労働者という属人的な能力を意味しており、その人の業務委託契約において、実質的な業務内容に変更がないような事例も想定されますが、また、業務内容に変更がないことは、雇用の継続があると評価されることを避けがたいとがその能力を発揮しているか否かという観点とは異なります。能力があっても、職務内容に変更があったがゆえに、能力を発揮できていない場合でも、賃金は変動しないという特徴があります。このように「能力」に着目するにあたって、いくつかの原則があると整理されており、昇格・昇進原則、能力の育成と公正評価の原則、思われます。37号告示を参考にしつつ、定年後の高齢者と締結する契約の内容が業務委託にふさわしい内容となるように、留意する必要があるでしょう。職務等級制度は、職務と賃金を関連づけて決定していることから、職能資格制度と比較すれば、職務変更にともなう賃金減額は認められやすいといえます。ただし、就業規則上の根拠が必要であり、人事権の濫用とならないような配慮は求められます。A職務等級制度において賃金の減額(降格措置)はできるのか教えてほしい社内の賃金制度について、自社では職能資格制度ではなく、職務等級制度に基づいて賃金を決定しています。このたび、部署の廃止にともない、職務内容の変更をともなう異動が必要となったのですが、職務変更とあわせて賃金を減額することは可能でしょうか。Q22022.148

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