エルダー2022年1月号
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2022.150はじめに1在職中の貸し借りというのは、主に未払い残業代、有給休暇、会社情報の取扱いですが、退職時までに清算しておくことが鉄則です。在職中であれば、従業員はとりあえず清算に応じてくれるからです。しかし、退職後は、労使双方に良好な関係を保持しようという意識も弱くなり、在職中のような清算がしづらくなるのです(図表)。未払い残業代を清算しておく2退職した従業員から、未払い残業代を請求されるケースがあります。従業員には、退職後でも残業代を請求する権利があり、従来その時効は2年でしたが、2020(令和2)年4月発生分から3年に延長されました。●未払い残業代とはいわゆる「サービス残業」ですが、厚生労働省では「賃金不払残業」といい、「所定労働時間外に労働時間の一部又は全部に対して所定の賃金又は割増賃金を払うことなく労働を行わせること」と定義されています。労働基準法では、法定時間外労働による割増賃金の支払が定められています。賃金不払残業は、労働基準法違反であり、あってはならないものです。しかしながら、退職した従業員が未払い残業代を請求するケースは少なくありません。●退職前の再確認従業員から退職後に未払い残業代を請求されることがないよう、請求対象となる期間中に未払いがなかったかを、再度客観的に確認します。また、未払い残業代請求のリスクを回避するためにも、客観的に労働時間の把握ができるような仕組みを構築することも重要です。 生涯現役時代を迎え60歳、65歳を超えて働くことがあたり前となり、多くの高齢者が知識や技術、経験を活かして会社に貢献しています。とはいえ、そんな高齢者もやがて退職するときを迎えるもの。それまでの貢献に感謝を示し、気持ちよく退職をお祝いしたいところですが、ちょっとした行き違いにより“退職トラブル”が起こってしまうこともあります。本連載では、退職時の手続きやトラブル防止のポイントについて、社会保険労務士の川かわ越ごえ雄ゆう一いち氏が指南します。在職中の貸し借りは退職時までに清算しておく社会保険労務士川越雄一第  回2図表 在職中・退職後における貸し借りの変化〔在職中〕 問題の潜在化・未払い残業代・有給休暇取得・会社情報の共有、秘密保持〔退職後〕 問題の顕在化・未払い残業代請求・労使紛争の引き金・会社情報の漏洩など

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