エルダー2022年1月号
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エルダー51有給休暇を清算しておく3有給休暇(年次有給休暇)というのは預り金のようなものです。ですから、退職時までには取得をうながし清算します。有給休暇の不満は、ほかの労使紛争を起こす引き金になりやすいものです。●未消化(未取得)の有給休暇有給休暇は勤続年数により付与日数が決まっており、勤続6年6カ月以降は毎年20日です。従来は年間に何日取得するかは本人の自由でしたが、2019年4月から年5日の有給休暇を確実に取得させることが会社の義務となりました。それでも人によっては、周りに気兼ねして取得しなかったり、病気で休むときのためになどと、未消化の有給休暇を多く残しています。● 想定されるトラブルよくあるのは、退職時に残っている有給休暇をまとめて請求される場合です。在職中に取得していないのだから、それも仕方ないと割り切って取得させればよいのですが、「そんなことは認められない」と有給休暇の取得を会社が拒否した場合にトラブルは起こります。「いままで休まずにがんばってきたのに」と、有給休暇のことを引き金に在職中の不満が表面化します。● 有給休暇はきれいサッパリ消化させる有給休暇は「預り金」のようなものですから、退職時までに残日数ゼロにするのが原則です。そのためには、退職2カ月前くらいまでに有給休暇の残日数を伝え、退職日までに取得をうながすようにします。仮に、退職日ギリギリまで引き継ぎが必要であれば、なおさら早めに伝えて早めに取得させ、気持ちよく引き継ぎをしてもらうほうが得策です。会社情報の取扱いを清算しておく4雇用関係が長くなると、会社情報を知る機会も多く、退職時にはその取扱いを清算しておくことも必要です。一方、会社が知り得た従業員情報の取扱いにも注意を払うことが必要です。つまり、お互いさまです。●漏らしてほしくない会社情報在職中であれば雇用契約の付随義務として会社情報を漏らさないという義務を負いますが、退職後はそのような義務もなくなります。そこで、退職後にそのような情報を漏らさないよう、退職時に「秘密保持誓約書」なるものの提出を求める会社もあります。しかし、そのような誓約が法的に有効となるには高いハードルがあります。多くの場合、法律で保護される情報にはあたらないからです。●想定されるトラブル「この誓約書にサインして」、「何でこんなものにサインしなくてはいけないのですか?」というやり取りはよくある話です。特に会社が誓約書を取りたがるのは、同業他社に転職をしそうな人の場合です。会社の気持ちもわかりますが、誓約書にサインしないことを理由に、在職中の行いに難くせをつけて退職金を減額でもしようものなら、トラブルが泥沼化するのは必定です。●ルールに則り清算する秘密保持誓約書を提出させる場合でも、法的に有効になるというより、「会社情報を外に漏らさないでくださいね」という、退職者へのお願いレベルであることを理解しておきます。また、会社情報を記録したUSBメモリなどは、すべて会社へ返還させ、保有していないことを確認させます。このようなことは、あらかじめ就業規則などでルール化・周知しておき、原則として退職者全員に対して行えば違和感がありません。

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