エルダー2022年1月号
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エルダー57大前研一 著/小学館(小学館新書)/880円和田秀樹 著/朝日新聞出版(朝日新書)/825円『月刊シルバー人材センター』編集室 編/労務行政/1650円「高年齢者が働くことを通じて生きがいを得ると共に、地域社会の活性化に貢献する」ことを目的に、全国で運営されているシルバー人材センター。現在、約1300のセンターのもと、約70万人の会員が活動を行っており、その活動・運営状況の共有や会員間の情報交換・交流の役割をになっているのが『月刊シルバー人材センター』(発行:労務行政)だ。本書は、同誌の人気企画である巻頭インタビュー「これからのシルバー人材センター」、「人生100年時代の高齢者の〈生き方・支え方〉」を再編集しまとめたもの。生涯現役で活躍している文化人やアスリートをはじめ、各界の著名人、専門家など、計28人のインタビューを掲載している。インタビューは「楽しみながら生きる」、「チャレンジして成長する」、「絆をつくり深める」、「地域社会とつながる」、「生涯現役で社会貢献する」の五つのカテゴリーに分かれて掲載されており、それぞれのインタビューからは、高齢期になっても活き活きと生き、暮らしていくための知恵や心構えのほか、人や地域、社会とのつながりのなかにこそ、人生を楽しむためのヒントが詰まっていることに気づかされる。人生100年時代の生き方を指南する一冊だ。老いを感じ始めたとき、その先の健康や認知症、お金の心配、孤独であることなどを想像し、不安にかられる人は少なくないだろう。著者は、老年精神医学を専門とする精神科医。「老後の不安」、「老いることへの不安」について、単なる思い込みや、高齢者の実態をよく知らない情報に起因するもので、「幻想にすぎないことが多い」とつづっている。そして、これらの「不安」の正体を明かし、「不安」との向き合い方を自らがかかわってきた人々とのエピソードなどを交えながら説いていく。また、老いることによる体や脳、ホルモンの変化や認知症のこと、高齢者が生きづらいと感じてしまう日本社会の病理などについても言及。そうしたことに対し、著者のこれまでの経験もふまえて、「勝ち負け意識を捨てる」、「早いうちから人に教わる習慣をつけておく」といった老後の不安を消し去るヒントを紹介。世の中が決めた「高齢者像」に惑わされることなく、自分の主観を大切にしてほしいとの見解も示し、最後に「心をラクにして生きるための5つのポイント」をまとめている。漠然と抱いていた老後の不安について、考えを整理するきっかけにもなる一冊である。2021(令和3)年、70歳までの就業機会確保が努力義務化され、高齢者の労働機会が拡大された。この拡大により、高齢者が稼ぎ続ける素地が整備されたといえるだろう。本書は、著者の『50代からの「稼ぐ力」』(2019〈平成31〉年1月)をコロナ禍の影響をふまえ再編集して、新書化したものである。著者は、いま社会・企業で活躍しているミドル世代が、シニア世代となる時代には社会保障制度の安定性・持続可能性があやぶまれ、定年後も稼ぎ続けなければならない「定年消滅」時代が到来すると予想する。その「定年消滅」時代を乗り越えるには、「発想力」を鍛え「稼ぐ力」を磨くことが必要だと主張する。その「発想力」はRTOCS※の手法、例えば「あなたが○○会社の社長であったら」と仮定し、自分ならどう考えるか想像し、さまざまにシミュレーションすることを積み重ねていけば鍛えられるとした。この鍛えられた「発想力」さえあればシニアでも起業は可能で、「稼ぐ力」を磨くことができるという。終章では、シニアになっても「発想力」を発揮して、やり残しのない生きがいのある楽しい老後であるべきと結んでいる。人生100年時代を楽しむ生き方60代から心と体がラクになる生き方老いの不安を消し去るヒント稼ぎ続ける力「定年消滅」時代の新しい仕事論著名人、専門家などによる「人生を楽しむ」ためのヒント老年精神医学を専門とする精神科医が説く、老いを上手に受け入れる方法稼ぐ「発想力」を鍛え、やり残しのない人生を送るために※ Real Time Online Case Studyの頭文字。著者が代表を務めるビジネス・ブレークスルー(BBT)独自のケーススタディの手法

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