エルダー2022年1月号
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2022.162疾病予防、重症化防止、メンタルヘルス対策の3本柱社員の健康増進に向けた取組みの重要性について、田中さんは次のように語る。「年齢が上がるにつれて医療費は増える傾向にあります。特に60代になると生活習慣関連疾病の医療費が非常に増えます。そうならないように、現役時代から生活習慣を改善して健康を維持し、社員の健康寿命の延伸と医療費削減につなげることが、会社・健保双方の使命と認識しています」健康増進中期計画の柱は、疾病予防、重症化防止、メンタルヘルス対策の3本だ。疾病予防では、がん検診受診と、運動・食生活・喫煙に対する取組みがある。前者については、肺がん・胃がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がんの五つのがん検診の積極的な受診をうながしている。なかでも乳がん検診については検診車「マンモバス」が全国を回って検診を行う活動を20年以上にわたって行い、がんの早期発見に寄与している。後者については、「ヘルスケアポイント制度」とアプリを活用した意識醸成を図っている。重症化防止については、定期健康診断を受診後、疾患が見つかった人に対して、産業医・保険医による事後措置面談や、健保組合における特定保健指導の受診をうながしている。メンタルヘルス対策については、特にコロナ禍において重要度が増しており、コミュニケーション強化による早期解決などに力を入れている。これら一連の活動について、データ分析を基にPDCA(Plan‐Do‐Check‐Action)を回しながら実効性を高めているのが同社の特徴といえる。健康のための活動を社会貢献にもつなげる社員の運動や食生活の面で意識を高めるカギとなる施策が、ヘルスケアポイントとアプリの活用だ。アプリに毎日ログインし、歩数や体重、食事などを記録することでポイントがたまる仕組みで、たまったポイントはギフトやオリジナルグッズなどに交換できる。なお、アプリは2021年10月にグループ会社が開発した「QOLism(キュオリズム)」というアプリに変更し、機能強化を図っている。例えば、歩数は1日あたりの歩数(4000歩以上)に応じて5〜25ポイント(以下、「pt 」)が付与される。体重記録は5pt/日。食事記録(2pt/回)は、食事をスマートフォンで撮影するだけでカロリーや栄養素を知ることができる。そのほか、アプリに登録された健康診断結果を確認すると100pt/年(さらにBMIが標準の場合100pt/年)、17項目のチェックで自分の健康状態や生活習慣に近いものを回答すると、五つの疾病リスク度がチェックできる「疾病リスクチェック」実施で200pt/年が付与される。ユニークなのが、健康増進活動と社会貢献をリンクさせている点だ。以前のアプリでは、登録された歩数1万歩あたり1円に換算してQOL向上に資する取組みを行っている団体等への寄付を行ってきた。「自分のためだけに活動するよりも、人のために活動できないか」という社員の声がきっかけになったという。田中さんは、「少額ではありますが、SDGsにつながるような社会貢献と関連づけることで、取り組む意欲が一段と増すのではないかと考えています」と話す。寄付は地域ごとに行われている。例えば本社QOLism(キュオリズム)QOLism(キュオリズム)

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