エルダー2022年4月号
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2022.412プランナーにご相談いただければと思います。年功的な賃金の仕組みを見直すチャンスと受けとめる70歳までの雇用を推進する課題として、「人件費がかかるのではないか」ということもよく聞かれます。年齢や勤続年数に応じて役職や賃金が上がっていく年功的な賃金制度の企業では、定年を延長すれば人件費がふくらんでしまいます。この場合、賃金体系を変えたり、年功ではなく、仕事の成果に応じた賃金の仕組みに変えるといった見直しが必要になります。賃金制度の見直しは会社全体にかかわることであり、決断と手間がかかります。しかし、いまを改定のチャンスととらえて取り組んでほしいと思います。その際、「人件費はコストではなく投資である」という発想が大事になります。グローバル化、デジタル化、少子高齢化の三つをあわせ持つ現代は、IT化による生産性向上の一面がある一方で、人を雇用し、育てて、適材適所の人事を行うことがますます重要になっていると思います。当機構には、企業からの要請に基づき、賃金制度などの改定に対し具体的な支援をプランナーが有料で行う「企画立案」という制度がありますので、活用していただければと思います。高齢者雇用の取組みのスタートに管理職の気づきをうながす研修を実施70歳までの就業確保措置を推進し高齢社員を活用していくうえで、企業に求められる取組みには、主に次のことがあげられます。①高齢社員についての会社の方針・ 戦略を明確にする②高齢社員の評価・処遇制度を明確にする③高齢社員の仕事内容・就労条件を明確にする④高齢社員の能力開発・キャリア開発を行う⑤高齢社員が活躍するための 推進体制・風土づくりを行う④については、一例として、当機構の「就業意識向上研修」が有効です。企業における中高年社員と職場の活性化を支援するための研修で、職場管理者に対する研修と中高年社員に対する研修があります。私も講師を務めています。例えば、社員100人ほどのある会社で、70歳就業に向けた制度改定にあたり、キーパーソンとなる管理職の方々に高齢者雇用についての意識を高めてもらう、就業意識向上研修を実施しました。グループ討議などにより、互いの見方や思っていることなどを知り、気づき、考えてもらうことを主体としたものです。高齢者雇用の取組みを成功させるためには、こうした研修の機会を持つことが重要だと考えます。人が集まる職場へ高齢者雇用は企業からのメッセージ高齢者雇用の推進は、「長く働いてもらいたい」という企業から社員へのメッセージです。社員のモチベーションを高めるための取組みであり、それが生産性向上にもつながりますので、早めに検討することをおすすめしています。くり返しになりますが、明確なメッセージを社員に伝え、制度として整備する。また、高齢社員の評価・処遇制度をきちんと整えることが特に重要なポイントといえるでしょう。働き方が多様化しているいま、人事・総務の仕事はますますたいへんになっていますが、そのなかでより重要になっているのがコミュニケーションです。会社と社員の双方で十分に話し合い、互いに納得し、安心して働き続けられる職場環境を整えることが求められています。「この会社でなら70歳まで働くことができる。期待され、スキルも磨ける」、社員がこう思える職場になれば、人材が出ていくことなく、他社等からよい人材を獲得することもできます。つまり、〝人が集まる会社〟になるのです。

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