エルダー2022年4月号
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エルダー13特集高年齢者雇用安定法改正から1年をふり返る65歳超の雇用は個別契約が主流70歳就業確保に向けた制度整備が課題改正高年齢者雇用安定法︵以下、「改正高齢法」︶は、70歳までの就業機会の確保のために事業主が講ずべき措置を規定しています。しかし、努力義務のため、当機構の65歳超雇用推進プランナー︵以下、「プランナー」︶の活動で私が訪問した京都府内の企業では、すでに就業規則を改定した、あるいは改定に向けて準備をしているというところはまだほとんどありません。きちんとした制度を整備することにより、企業と労働者の双方にメリットをもたらすことが期待できますから、それぞれの会社の実情にあわせて、検討を進めていってほしいとお話ししています。一方で、訪問先の多くの企業では、65歳以降も雇用を継続されている人がいます。65歳までは雇用が義務づけられていますが、それ以降は、企業にとって必要な人材を個別労働契約により継続雇用しているのです。ただ、それらの企業から、今後は65歳以降の雇用について制度化することを検討していきたいという意向も聞いています。そうした声に応えて、私たちプランナーは、各企業の状況に応じて70歳までの定年延長や継続雇用延長などの制度改定に関する専門的かつ技術的な相談・助言を行います。具体的には、訪問企業へのヒアリングに基づき、企業が抱えている課題を整理し、その取組みのヒントを見出します。企業からの要望があれば、より具体的な制度改善提案を行う「企画立案」や、働く側の意識啓発のための「就業意識向上研修」などを行っています。65歳超の雇用を推進する三つのメリット70歳までの就業確保措置は、65歳までの雇用確保とは検討すべき課題が異なります。60代前半は公的年金がまだ支給されません︵現在は特別支給の厚生年金のみ63歳から支給︶ので、労働者も65歳まではフルタイム勤務を希望し、ある程度の収入を確保しているケースが多くみられます。一方で60代後半になると、体力面、健康面での個人差が大きくなり、それまで担当していた仕事の一部は、継続が困難になることがあります。加えて個々の事情から、フルタイム勤務を希望しない人も出てきます。企業としては、柔軟な働き方への対応や、新たな職域の開発などが課題となってきます。しかし、70歳までの就業機会を確保するメリットは、さまざまです。一つめは、労働力の確保です。経験豊富で自社の事情を熟知した社員をさらに活用できるメリットは大きいでしょう。私が訪問している小規模企業の多くでは、高齢社員が不可欠な存在です。76歳の現役の管理部長や、95歳まで製造現場で機械加工を担当されていた人もいました。会社としては「生涯現役で働いてもらいた高齢社員と企業がともに成長し貢献しあう関係の構築を支援当機構京都支部 65歳超雇用推進プランナー 松尾安やす藏ぞう65歳超雇用推進プランナーに聞く❷アドバイザー・プランナー歴:22年。アドバイザー・プランナーとして、これまでに延べ約2000社に相談・助言を行ってきた実績を持つ。

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