エルダー2022年4月号
16/68

2022.414い」というのが本音のようです。二つめは、70歳までの雇用を推進するための職域開発や職場改善により、業務効率の向上が期待できることです。三つめは、高齢社員に若手社員の相談役になってもらうことにより、若手社員の離職を防止できる効果も期待できます。若手社員が高齢社員と一緒に仕事をすることで、職場のコミュニケーションが促進されたという事例もあります。また、特に中小企業では障害者を雇用していくために援助する人員の余裕がないという実情が見受けられます。そこで、経験豊富な高齢社員に障害者雇用の支援をになってもらうことも考えられます。高齢社員の活用で大事なことは得意分野を有効に活かすこと高齢社員を活用し、戦力化するためには、高齢社員に意欲を持って働いてもらえる制度を導入することが求められます。つまり、会社の期待を感じてもらえる制度にすることです。例えば、定年を70歳に延ばすことは、「70歳まで正社員として責任を持って仕事をしてもらう」という会社の方針を社員に宣言したことになります。雇用制度は、会社として社員をどのように活用し、処遇していくのかということを示すものなのです。また、会社と社員の信頼関係をしっかり築くことが大切です。そのためには、働きぶりを適正に評価することが必要です。人事評価は、賃金のためだけでなく、有効に人材を活用し、育成していくためのものでもあります。そして、高齢社員の個々の事情に配慮し、働きやすい勤務体系を導入することです。加えて、役割や責任を明確に伝え、目標管理制度を導入することや、安全管理と健康管理もたいへん重要です。また、高齢社員の活用で大事なことは、得意分野を有効に活かすことでしょう。ある工作機械メーカーで、機械加工に長けた技術者の方が、定年後は社内技術研修の専任講師として活躍されました。継続雇用を終了して退職後、その方は自ら会社を立ち上げ、引き続き、以前勤めていた会社の指導者をまかされているほか、顧客企業の技術研修の講師も引き受けています。改正高齢法に先駆けて、70歳を超えてなお、個人事業主として活躍されている事例です。長年のキャリアを存分に発揮して、長く勤務した会社や業界に貢献されています。ミドル世代が70歳まで働くうえでいまから準備しておきたいこと現在40~50代のミドル世代が、70歳まで仕事を続けていくことを想定すると、あと20~30年ほどの期間があります。ただし、高度経済成長の時代とは異なり、終身雇用という価値観は崩れてきています。ミドル世代のみなさんは、これまで懸命に企業に貢献されてきたと思いますが、「今後も、その延長線上の働き方でよいのだろうか」と考える機会が必要になってきていると思います。また、昨今の経済環境の変化は非常に早く、企業はその変化に対応していかなければ存続できなくなります。したがって、労働者も変わっていくことが求められます。そこで、キャリアプランニングが重要になります。企業には人材開発の視点から、キャリアプランの作成、定期的な見直し機会の提供、キャリアプラン実施のための支援、必要な研修の実施などが求められます。今後、65歳を超えて雇用される人がさらに増えていくでしょう。それにともない、70歳までの就業機会確保に向けた制度整備の必要性はいっそう高まると思います。高齢社員をもっと有効に活用する仕組みを、それぞれの企業で検討されてみてはいかがでしょうか。高齢社員と企業がともに成長し、貢献しあう関係を構築していくことが、結果的に制度をよりよいものにしていくと思います。

元のページ  ../index.html#16

このブックを見る