エルダー2022年4月号
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エルダー15特集高年齢者雇用安定法改正から1年をふり返るはじめに改正高年齢者雇用安定法(以下、「高齢法」)が2021(令和3)年4月に施行されて1年を迎えます。高齢法は65歳から70歳までの就業機会の確保措置として、従来の雇用確保措置の雇用期間を延長した①70歳までの定年引き上げ、②70歳までの継続雇用制度(再雇用制度等)の導入、③定年制の廃止の三つの措置に加えて新たに三つの選択肢が用意されています。一つは、(1)70歳までの継続雇用制度のうち自社や特殊関係事業主(子会社・関連会社など)以外にほかの事業主での継続雇用も可能になったことです。次に「創業支援等措置」として、(2)70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度、(3)70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度(事業主が自ら実施する社会貢献事業と、事業主が委託、出資等=資金提供する団体が行う社会貢献事業の二つ)が設けられました。コロナ禍で遅れた改正高齢法への対応企業の本格的な対応はこれからしかし、新型コロナウイルスの感染拡大による業績への影響などで高齢法の施行に向けた準備が遅れる企業が続出しました。例えば、ある建設関連会社の人事部長は「2019年後半から人事部内で現行の継続雇用制度を含めた人事制度改革の検討を始めていたが、2020年4月以降にオリンピック関連の受注が減少し、9月中間決算で業績が悪化して以来、検討がストップしている。コロナ禍以前は業績も好調で、まず定年を65歳に延長し、条件つきで70歳まで継続雇用しようという声もあったが、正直いっていまは固定費の削減やコロナ対策に時間を割かれ、高齢法への対応は優先順位が低いのが実状だ」と語っていました。実際に日本経済団体連合会が2020年8~9月に調査した70歳までの高年齢者就業確保措置の取組み状況によると、「具体的な対応を決定済」と答えた企業はわずかに9・1%。「対応について検討中」が43・3%、「まだ検討していない」が43・3%となっていました(「2020年人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果」2021年1月19日)。企業が本格的に検討に着手したのは2021年4月以降です。経団連が2021年9~11月に実施した同じ調査によると、「対応済」が21・5%、「対応を検討中」29・5%、「検討する予定」38・6%、「検討していない」10・4%となって労働ジャーナリストから見た改正高齢法の現状と課題寄 稿労働ジャーナリスト 溝上憲文

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