エルダー2022年4月号
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2022.418020年)より、65歳以降1年更新の『業務委託方式』をJOBベースで本人とマッチングする運営として実験的にスタートしており、当該層の柔軟な働き方ニーズに応える運営にしたいと考えている。現時点では、『改正高齢法』への対応の選択肢の一つとして検討予定である」という企業(不動産業)もあります。たしかに業務委託は個人事業主として契約し、いわゆるフリーランスになることで働き方の自由度が高まります。65歳以上になると健康や家族の事情などでフルタイム勤務がむずかしい人が発生する可能性も高くなります。同社以外にも柔軟な働き方の一つとして業務委託を検討している広告関連企業もあります。ただし同社の人事部長は委託できる人材は限定されるといいます。「一つは委託する仕事の切り出し方がむずかしいこと。もう一つは外注に出すほどの専門性を持つ人がそれほどいるかという問題もある。例えば人事の分野では、会社の就業規則の改定・変更などの手続きや労働基準監督署との対応をしてもらう仕事であれば、労働法制に通じた人に業務委託できるが、どうしても人数が限定されるし、当然、希望者全員というわけにはいかない」そもそもこれまで外部でも通用する専門性を意識的に育成してこなかったのに、65歳を機に自社以外に他社でも仕事を受注し、収入を得ていくことはむずかしく、仮に業務委託契約による就労を選択肢にしたとしても、ごくかぎられた人材になりそうです。業務委託による就労を拡大していくには、少なくとも60歳以降から専門性を意識させる仕事の与え方の工夫や、兼業・副業による外部との接点を通じて自らの市場価値を高めることが必要でしょう。前出の経団連の調査では非雇用(雇用によらない)の措置を導入しない理由についても聞いています。それによると「雇用による措置で十分だから」が58・3%と最も多いですが、「検討に当たっての情報やノウハウが不足しているため」(22・1%)、「導入手続きが煩雑であるため」(5・7%)という理由があがっています。業務委託については厚生労働省の指針にも「高年齢者と業務委託契約を締結する場合、雇用時の業務内容および働き方と同じような業務・働き方をさせてはならない」と明記され、周知のように業務委託契約であっても労働基準法上の労働者(第9条)であるかないかは、契約形態にかかわらず実態を見て判断されます。改正高齢法の施行当初、自社の社員を業務委託に切り替えても結果的に“偽装雇用”になってしまうことを懸念する企業もありました。社会貢献活動のノウハウが不足する企業NPOや政府・自治体との連携が必要また、社会貢献事業に従事できる制度の場合、①自社で実施する社会貢献事業とは、本業以外のSDGsなどの活動も入り、イメージとしては自社の歴史や商品の歴史を説明するセミナー、講演会の講師、植林事業など自然再生の環境プロジェクトのボランティア活動のリーダー役などがあります。②委託・出資等する団体とは、財団法人やNPO法人など、すでに企業と一定の関係を持っている団体を想定しています。しかしこうした活動とは無縁の企業も多くあります。現在、大手企業はSDGsなどの活動に熱心ですが、実際にNPO団体に出向している人はそれほど多くありません。仮に社会貢献活動を希望する人が多くても、実際にどういう活動をになうのかについてのノウハウなどに乏しい企業が大多数です。企業1社の力で実現することはむずかしく、NPOなど地域の社会貢献団体や政府・自治体と連携した一定の受け皿を用意していく必要があるでしょう。就業確保措置の新たな選択肢が、社員の希望する働き方として機能するには、企業自身による社員の現役時代からの育成方針の見直しと、政府・自治体の支援が不可欠だと思います。

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