エルダー2022年4月号
23/68

特集高年齢者雇用安定法改正から1年をふり返るエルダー21分の望む勤務スタイルで仕事を続けることが可能です。短時間、短日でも働く意思があれば、ぜひ引き続き当社でスキルを発揮していただきたいと考えています。ひいては、当社の技術の伝承をはじめ、歴史やパーティションの変遷など高齢社員の実体験から出る言葉を、若手に伝えていただきたいです」と期待する。また、業務委託契約制度について銭田課長は「以前、現場の監督をになっていた社員が独立したいといって退職したことがありました。業務委託契約制度は、彼のように専門的なスキルを持つ人材のニーズを想定しています。独立の希望を持った人の希望を叶え、なおかつ社内でスキルを活かしてもらう新しい働き方です。必ずしも勤務して働くということだけではないというところがポイントです」と、65歳以降の働き方に選択肢が増えたことを強調する。今回、雇用の上限年齢廃止を社内に大々的に通知したとき、65歳以降も働けるという安心感を感じた社員が多くいる一方、上限年齢という節目がなくなったことで「何歳まで働けばよいのか?」と戸惑う社員もいたそうだ。「シニア社員等雇用制度」導入により65歳を超えても働きたい社員が増加「シニア社員等雇用制度」を導入して、およそ1年。制度化して感じ取った変化について聞いた。「シニア社員等雇用制度により、雇用の上限年齢を廃止したことで、65歳以降も働きたいと意欲を示す人が確実に増えました。本人の意思があれば、働き続けられる環境ができたと思います」(小坂部長)、「以前、65歳以降も働くことができたのは、かぎられた社員だけでした。自分から『働きたい』といえるようになったのは、大きな成果。これまで水面下にあった希望が表面化したともいえると思います」(銭田課長)と、今回の雇用の上限年齢廃止により、65歳以降も働きたい人に対して働く機会を提供できたと口を揃える。また、「制度として働けるなら」といった潜在的にあった「働く意思」の掘り起こしにつながったとみている。1年経ったいまのところは、まだ手探りの部分が多いが、今後さまざまな事柄を明確にしていきたいという。検討している取組みの一つは、評価制度だ。65歳以降の評価制度を確立し、働きぶりを給与、賞与に反映する仕組みにする。これを高齢社員のモチベーションアップにつなげたいと考えている。そして、60歳から勤務コースを選べる制度を導入し、多彩な働き方を提示したいとも考えている。現在は、勤務形態については個別に対応しているが、例えばAコース、Bコース、Cコースなどを設け、それぞれ、勤務内容、給与を明確に体系化し、社員はコースを選択することで「自分はこう働きたい」と意思表示ができるような仕組みを検討中だ。働き方を大きく整理して社員に示し、社員が自ら選んで働き方を決めていく。そんな社員主体のキャリア設計を可能にすることが理想だ。「週三日働ける人がいれば、フルタイムで現役同様にバリバリ働きたい人もいるかもしれません。働きたい人たちに対して、よい報酬を出せるコースがあってもよいと考えています。これもモチベーションの一つになると考えています」(銭田課長)今後の課題について、銭田課長は労務費だと指摘する。雇用の上限年齢がなくなり、だれもが上限なく働けるようになると、65歳以上の社員が増え、会社全体の労務費が増加することは必至だ。「現在の60歳到達者は年間10〜20人ほどで推移していますが、この先バブル期に入社したボリューム層が60歳、65歳を迎えると年間の到達者は倍以上になる予測をしています。その前に高齢社員の働き方をより明確にする必要性を感じていると同時に、新卒も採用しつつ、全体がバランスよくまとまった会社の賃金構造を考えていかなくてはならないと感じています」(銭田課長)

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る