エルダー2022年4月号
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特集高年齢者雇用安定法改正から1年をふり返るエルダー25現在の平均年齢は約40歳。「男女ともに全体的な年齢バランスはとれているが、現在50代前半の層が厚く、5年後、10年後を考えると、役職定年・定年を迎えるミドル・シニア層が大幅に増えることから、高齢従業員の雇用制度を整えることがより重要性を増していました」(生野さん)金融業界では珍しくないが、百五銀行でも、すべての人が定年まで銀行本体で働くというイメージは持たれていない。55歳の役職定年を境にして、約半分が関連のグループ会社や外部の企業に転籍する。もっとも層が厚いいまの50代が、55歳役職定年、60歳定年を迎えたとき、転籍を簡単に増やすことができないことを考えると、銀行本体に残る高齢層が増えることが想定される。このようなことからも、高齢者雇用について、制度整備を進める必要性が高かった。これからの10年に向けて業務権限の付与と副業制度の導入「これから10年先を考えると、シニア行員はいまの2~3倍となり、効率化などで銀行の総人員が減っていくなか、ミドル・シニアの占める割合が非常に高まります。高齢者雇用という社会的要請はもちろんですが、企業にとっても、高齢従業員をチームの戦力として活躍できる職場環境づくりを行っていく必要があります」(生野さん)高齢従業員の戦力化に向けた仕掛けも、再々雇用制度には仕組んである。「今回制度化した65歳以降の再々雇用では、通常のアシストスタッフ(パートタイマー)では想定されていない業務上の権限である検印権限を持たせて、現場でのリーダー的役割を期待しています」(生野さん)という。2021年8月には、申請により副業を認める制度を導入した。銀行が認めた場合に、個人事業主型の副業ができる制度であり、講演や翻訳など保有資格を活かした副業や趣味・特技を活かした副業を想定している。本制度の導入により、多様なキャリア選択肢のもと、従業員自らが望むキャリア形成をできる環境を整えた。再々雇用制度の評価再々雇用制度に対する、シニアの反応を見ると、「昨年4月に再々雇用制度を導入し、65歳を迎えた方の6~7割が継続して働くことを希望しています。意識調査でも、大半が65歳以降も働きたいと回答しており、好印象で受けとめられていると思います」(生野さん)シニアがアシストスタッフとして、権限を持って働くことに対する、現役世代の反応はどうだろうか。「仕事を奪われるといった感覚はないと思います。人手が足りないこともあり、業務を承認する検印権限のある人が増えることは、現場としてもウエルカムでしょう。検印できる高齢従業員が増えたからといって、若手の昇格を止めるわけではありません。高齢従業員自らがつちかってきたキャリアやノウハウをうまく若手に伝承していってもらえれば、ありがたいですね」(生野さん)という。働き方改革と新たな業務の可能性ミドル・シニアの比率が高まるなか、生野さんは「健康経営に積極的に取り組んでいます。その重要性は今後、ますます増えていきます」と話す。働き方改革でも、労働時間短縮に取り組んでいる。かつて21時、22時の終業は珍しくなかったのが、現在では、時間外労働時間の平均が月14時間程度と大きく改善しているという。労働時間の短縮は、高齢従業員を活用するうえでも、大きなアドバンテージとなるだろう。高齢者雇用をめぐる、グループ会社を中心とする転籍については、先に触れたが、ほかの民間企業への転籍については、後継者や経営幹部を求めている企業に対し、希望に合致する人材

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