エルダー2022年4月号
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2022.428長が2017年ころから打ち出していたという。定年制廃止に関する取組みの中心をになってきた同法人の進しん藤どう浩ひろ美み本部長は、「現在は毎年新規学卒者の採用ができていますが、生産年齢人口が大幅に減少していくなかで、いずれ人材確保が見込めないとなったとき、事業の縮小を考えなくてはいけなくなります。そうならないために、60歳を超えた方々にもなるべく長くがんばってもらおう、という考えが始まりでした」とふり返る。「人生100年プロジェクト」と名づけた取組みは、2019年から具体的な制度設計の検討が進められた。不利益が生じないよう、1000人ほどの職員のモデルで試算を重ねるなどして作業を進めていき、ある程度内容が固まったところで役職員、労働者代表、組合への説明会を行った。何度か説明会を行いながら、ブラッシュアップして内容が定まり、2021年春から全職員への説明会を開催して7月に制度開始となった。従来、同法人の制度では、60歳で定年退職し、以降は希望に応じて、嘱託職員として、責任や時間の度合いによって、フルタイムまたはパートタイムの働き方を選択することができた。例えば、フルタイムの嘱託職員でも「夜勤、日曜日の勤務はしない」や、パートタイムの嘱託職員の場合「1日4時間勤務にする」など、それぞれの希望や事情を考慮して働き方を決めることができる。今回の定年制廃止は、従来のフルタイムの嘱託職員とパートタイムの嘱託職員の選択肢のほかに、「60歳以降も正職員を継続する」という選択肢を増やしたものだ。新制度では、「60歳」を、これからの働き方を考える「キャリアポイント」と位置づけた。60歳までを「ファーストステージ」、60歳以降も正職員を継続する場合は、「セカンドステージ」と区分した。セカンドステージは、60歳までと同様に勤務するが、責任は軽減され、基本的に役職は外れる(一部例外あり)。一方、セカンドステージの道を選ばず、60歳以降は嘱託職員として、フルタイムまたはパートタイムとして勤務を続けることも選択できる。賃金体系・評価制度も再整備働き方の違いによって明確に分ける定年制廃止にあわせて、賃金体系の見直しも行った。従来、定年後再雇用で嘱託職員として勤務する場合、勤務制限なしで夜勤などを行う職員も、夜勤や土・日勤務も行わないなど勤務制限をする職員も、嘱託職員として賃金体系は同じであった。また、60歳までに比べて、給与は一律にダウンしていた。しかし、定年制を廃止して「セカンドステージ」という正職員として新たな区分をつくったため、定年後の嘱託職員とは異なる賃金体系を創設。また、60歳を超えて正職員でいることのメリットとして、セカンドステージの正職員には業務手当(責任度合により3段階設定)、正職員と同等の賞与を支給する。人事評価制度も再整備して、正職員はファースト・セカンドともに「目標管理評価」があるが、契約・嘱託職員にはこの評価はない。「資格要件評価」は、「ファーストステージ」、「セカンドステージ」、「契約・嘱託」の3区分に分けて設定。それぞれの違いを明確にした。そして、従来はなかった「健康評価」を新たに加えた。「ファーストステージ」と「60歳前進藤浩美本部長

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