エルダー2022年4月号
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2022.430る腰痛予防対策として、3年前から「ノーリフトケア(持ち上げない介護)教育」を導入している。また、最新の福祉用具や介護ロボットを計画的に導入している。メンタルヘルス対策では、365日24時間、専用フリーダイヤルで臨床心理士や産業カウンセラーが電話やWebでカウンセリングする「恵寿こころの相談室」を委託により開設した。2021年には、「けいじゅ健康保険組合」を設立。職員の病院受診結果・健診結果を自分のスマートフォンなどで管理し、未病・予防につなげていくためのアプリの活用を職員に促進している。また、55歳以上の職員への取組みとして、骨密度検査の実施も開始した。同法人には、もともと新しいことにチャレンジする風土がある。過去には、2006年に医療記録と介護記録の統合を図った医療介護統合型電子カルテの導入、2019年にAI問診システムを導入するなど果敢に最新システムを取り入れ、働き方改革につなげてきた。「導入当初は、タブレット端末の扱いなどに慣れていない高齢職員をカバーしながら使い始めましたが、10年ほど前からは、ほとんどの職員が申し送りなどをタブレットで行っています。当初は戸惑っていた職員も、いまでは最新設備や新システムは、『より簡単になる』、『より作業がしやすくなる』ものと受けとめるようになっています。DX(デジタルトランスフォーメーション)と健康経営は、根本的に生産性を上げるものであり、働き方改革につながっています」と進藤本部長。人生100年時代の働き方を構築していくため、今後もDX化を進めていく方針である。定年制廃止以降、退職者が減少長く働ける職場づくりを続けるさまざまな苦労があったようだが、進藤本部長は取組みのポイントを次のように語っている。「60歳以降の正職員が増えて人件費の増額が見込まれる分、何かを減らすことを考えなくてはいけなくなります。当法人では人件費の総額を変えずに、賃金体系などを見直すことでやりくりをしました。また、若い職員は60歳まで勤め続けるという感覚が薄らいでいるという変化をふまえ、がんばった分しっかりと配分する賃金体系にすることも考慮して取り組みました」1300人超の職員のうち、毎月1~2人が60歳になるという。定年制廃止を開始した7月から12月までに10人が60歳のキャリアポイントを迎えた。「全員がセカンドステージを選択しました。まだ始まったばかりですが、前制度より退職者が減っています。今後も新制度の評価を行い、職員に周知しながら、また次の取組みを考えていきます」60歳以降の職員については、「負担なく長く働き続けられる」ように、新しい仕事をつくり、キャリアチェンジの機会を増やしたいという。例えば、病棟から検査室への患者の移動を補助する人材として、「アシストクルー」(仮)という役割を考えている。看護職が専門的な業務に集中しやすいようにアシストする仕事だ。董仙会では、全職員が元気に長く働ける職場を目ざして新たな挑戦を続けている。AI問診システム。このシステムの採用により、1回あたりの問診時間が平均約6分間短縮された

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