エルダー2022年4月号
35/68

エルダー33FOOD日本史にみる長寿食食文化史研究家● 永山久夫豚肉が支える生涯現役パワー「八十の手習い」の時代が来た江戸時代、元気で活発なお年寄りのことを「老ろう翁おうなお若し」といいました。老翁は年老いた男のことで、高齢になっても仕事をしていて、まだまだ壮年のようだという意味です。「老人は年々老いて、年々賢し」という場合もあります。「年を取れば取るほど、いろいろなことを学習したり、経験をして、年々賢くなる」という意味であり、まことに理想的な加齢といってよいでしょう。極めつきは次のいい伝え。このなかには、現代人にこそ必要な長生きするための知恵が伝えられています。「八十の手習い、九十の間に合う」というもの。八十歳になってからでも、将来役に立つようなことを学習しておけば、実際に九十歳になってからでも、自分の夢を実現するうえで役に立つという内容です。江戸時代になると、世の中は平和となり、豊かになって、夢を持つ人が増え、現在と同じような長寿社会になっていました。長生きのご隠居さんが増え、八十歳、九十歳になっても仕事を続け、夢を持つ老人がたくさんいたのです。「恐るべし江戸のご隠居さん」ではありませんか。江戸は、実は生涯学習社会であり、生涯現役社会だったのです。最強のメニューは豚肉のショウガ焼き私たちも負けてはいられません。現代の日本人は世界トップクラスの長寿民族。これからは「九十の手習い、百歳の間に合う」でいきましょう。生涯現役で仕事をこなしながら、長生きを楽しむために欠かせないのがタンパク質。若さを維持するうえで重要な栄養であり、肉類にたっぷり含まれています。そのなかでも特に積極的に摂りたいのが豚肉です。豚肉は動物性タンパク質が多く、そのタンパク質を分解してアミノ酸に変え、筋肉や血液、免疫細胞をつくるうえで不可欠のビタミンB6も豊富に含まれています。さらに疲労回復効果のあるビタミンB1もたっぷり。老化を促進する活性酸素を除去する働きのあるビタミンB2やビタミンEもふんだんに含まれており、超高齢化時代を乗り切り長生きするためにも理想的な食材といってよいでしょう。最強のメニューは豚肉のショウガ焼き。今夜あたりいかがでしょうか。342

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る