エルダー2022年4月号
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2022.42TIS株式会社 執行役員 人事本部本部長高柳京子さんに応じて、プロ職、H職、M職の間の職種変更は、双方向に随時行われています。例えば、H職に認定された後に認定解除となりプロ職に戻るとか、組織長のポストから外れてH職に任命されるといった変更もあります。 以前の60歳定年制の時代には、プロ職は、55歳以降は原則として「専任職」に変更となり、職責や処遇を引き下げていました。そして定年後は「シニア社員」の呼称で、最長65歳まで有期契約で継続雇用していました。シニア社員は、定年時に専任職または事務職であれば「シニア職」と呼ばれ(一定の要件のもとでプロ職のまま定年を迎える場合もシニア職として再雇用)、定年時にH職やM職であった人は「シニアプロ職」と呼ばれました。 しかしこの再雇用制度には問題がありました。再雇用時に報酬を引き下げて固定基本給とするほか、目標管理を通じた実績評価を報酬に反映させていませんでした。報酬を引き下げる以上、職務もそれに見合ったものとす―貴社では2019(令和元)年に定年を65歳に延長されたのに続き、2020年には70歳までの再雇用制度を導入されました。そこに至る経緯を教えてください。高柳 当社の高齢者雇用制度は、2018(平成30)年までは定年60歳、その後は1年契約で65歳まで再雇用する制度でした。その制度の見直しの経緯をお話しする前提として、まず当社の職種についてご説明します。 社員の多くは社内で「プロフェッショナル職(プロ職)」と呼ぶSE、コンサルティング、企画などの専門職です。そのなかから高度専門職として社内の委員会で認定された人が、「ハイエンドプロフェッショナル職(H職)」に位置づけられます。また、プロ職やH職から組織長のポストに任命された人が「マネジメント職(M職)」です。これら3職種のほかに、バックオフィス業務をになう「事務職」がいます。 組織上・業務上の必要性や各人の実力評価る必要があり、活躍の場が制約されて、シニアの能力が十分に発揮できないという不具合が生じていたのです。これは、本人にとっても会社にとっても好ましい状態ではありませんでした。定年後再雇用を希望する社員数は5割を大きく下回り、シニア社員のモチベーションも低下していました。また、プロ職が55歳で専任職に移行するルールは、元来、年齢にとらわれない実力主義の人材活用や報酬決定を目ざす当社の人事方針にそぐわない運用であり、見直す必要がありました。―それらの課題を解決するために、2019年に65歳への定年延長を行ったのですね。高柳 その通りです。再雇用時に処遇をリセットする仕組みを改め、65歳まで一貫した制度としました。プロ職が55歳で専任職に移行するルールも廃止しました。ただし、M職については、ポストの世代交代をうながすために、60歳で降職する役職定年を設けました。 そして、65歳定年制のもとでも、本人の希望で定年年齢を60歳・63歳・65歳から選べるようにしました。退職給付はDC(確定拠出年金)または前払退職金の選択制で60歳までに拠出が終わっていますから、60歳以降であれば退職年齢の違いによる不利はありません。旧制度で生じていた課題をふまえ処遇ダウンのない65歳定年制を導入

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