エルダー2022年4月号
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2022.438に触れたことがない70歳以上のスタッフが在籍する部署であったため、相当悩んだそうですが、5年ほど前に思い切って導入しました。不慣れなスタッフには、できることから慣れてもらおうと努めたそうですが、当初はくり返し指導してもうまくいかなかったとのこと。新システムへの抵抗感もあったようでした。しかし、「置いてきぼりのスタッフがいてはいけない」と、あきらめることなく指導を続けるなか、あるスタッフが「Enterキー」と「マウスの左」だけに熊のシールを貼り、クリックという言葉は使わず、「熊を2回押す」と書いたシンプルなマニュアルを作成。「熊のシールのおかげなのか、根気よい指導と従業員の気持ちが伝わったのか、そのころから少しずつ苦手としていたスタッフも自分からパソコンに向かうようになり、新しいことができるということへの喜びを感じているようにも見えました」と山中係長は話します。また、従業員の出勤・退勤はICカードをかざしたうえで、出勤・退勤ボタンを切り替える必要があるものでしたが、切り替え忘れや間違いが多発。ボタンの文字が小さくて見えにくいことなどが原因でした、そこで、出勤と退勤を分けて、2台のパソコンを置いたところ、高齢従業員から好評で、間違いは減少したといいます。一方、独学でワードもエクセルも習得したベテ易ではないと思います。ですが、同社ではだれもが働きやすい職場づくりを目ざして、1人のスタッフが複数の業務を担当できるワークシェアリングに取り組み、休暇を取得しやすい体制づくりを行ったり、IT化の推進により業務の効率化を図ったりして改革に注力し、結果を出しています。そうしたなかで高齢者雇用も進められてきました」(豊田プランナー)同社は、高齢者雇用だけでなく、ワークライフバランスや働き方改革にも注力しており、「三重県男女がいきいきと働いている企業」認証制度(2016年度)、「みえの働き方改革推進企業」(2021年度)などに認定されています。工夫を凝らした指導でIT化を実現豊田プランナーが高く評価している同社の取組みの一つが、パソコンが苦手な高齢従業員も乗り越えることができたIT化の実現です。山中係長は、「IT化は、働き方改革の一助にもなりますので取り入れていますが、高齢のスタッフを含む従業員に適用するにはどうしたらよいのか、悩みました」と取組み当初をふり返ります。同社におけるIT化の事例として、それまで紙で行っていた宴会予約について、パソコンで管理する新たなシステムの導入があります。パソコンる方から、『年齢は気にしますか?』と質問されることがありますが、『当社は高齢者が多く活躍しているので、安心してください』とお話ししています」と山中係長。年齢で判断するのではなく、その人の持つ能力や得意なことを見て判断するようにしているそうです。豊田プランナーが同社を初めて訪れたのは、2019年4月のこと。すでに定年が70歳に引き上げられていたことや働き方改革を推進していること、IT機器の使い方に不慣れな高齢従業員への対応などを見聞きして、同社の取組みを高く評価し、2019年度の当機構の高年齢者雇用開発コンテスト(現・高年齢者活躍企業コンテスト)への応募をすすめて実現しました。「ホテルは24時間365日稼働していますし、従業員数67人の規模で働き方改革を進めるのは容役員秘書(管理課人事・総務・法務担当)の山中里紗係長

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