エルダー2022年4月号
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株式会社グローセンパートナー 執行役員・ディレクター 吉岡利之人事用語辞典■■■■■■■■いまさら聞けない 人事労務管理は社員の雇用や働き方だけでなく、経営にも直結する重要な仕事ですが、制度に慣れていない人には聞き慣れないような専門用語や、概念的でわかりにくい内容がたくさんあります。そこで本連載では、人事部門に初めて配属になった方はもちろん、ある程度経験を積んだ方も、担当者なら押さえておきたい人事労務関連の基本知識や用語についてわかりやすく解説します。2022.450今回はサクセッションプランについて取り上げます。サクセッションプランとは、一言でいうと「後継者育成に向けた計画」をさします。企業経営の前提に、将来にわたり継続していくこと(ゴーイングコンサーン)があるように、経営者も従業員も次世代を育成し、引き継いでいく必要があります。このことをふまえるとあたり前の取組みなのですが、実態としてはなかなか実践されているとはいいがたい状況にあります。サクセッションプランの本丸は経営者育成後継者の育成であるかぎり、サクセッションプランの対象は経営者・従業員の双方にあてはまりますが、特に近年はコーポレートガバナンス・コード(CGC)との関係で経営者の育成をさすことが多いです。コーポレートガバナンスとは、東京証券取引所の説明によると「会社が、株主をはじめ顧客・従業員・地域社会等の立場をふまえたうえで、透明・公正かつ迅速・果断な意思決定を行うための仕組み」を意味しており、コードは「実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を取りまとめたもの」とされています。上場企業においては、その原則を〝実践〞または実践しない場合には〝説明〞することが求められています。CGCは五つの基本原則と原則(基本原則を具体化したもの)、補充原則(原則を行動レベルまで詳細化したもの)に分かれていますが、この基本原則4の補充原則のなかで最高経営責任者(CEO)等の後継者育成について十分な時間と資源をかけて計画的に行われるようにと触れられています。CGCは2015(平成27)年に策定され、もともと最高経営責任者などの後継者計画については記載があったのですが、十分に機能していないという指摘も多く、2018年には、より具体的な取組みをうながす内容に改訂されました。サクセッションプランの実践状況それでは、どのくらいの会社が本腰を入れてサクセッションプランに取り組んでいるかというと、あまり芳しくない状況といえそうです。日本の社長・CEOの指名方法としてよくいわれるのは、現社長・CEOが次の後継者を指名するというものです。現任者の意向が強く反映され、後継者としての資質がある者が本当に選ばれているかわからない、退任後も影響を及ぼしやすい〝院政〞を敷きやすいなどの指摘が一般的にもよくみられます。これを裏づける調査「サクセッションプラン」第23回

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