エルダー2022年4月号
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エルダー57池田きぬ 著/すばる舎/1430円向むかい殿どの政男、北ほう條じょう理恵子、清水尚しょう憲けん 著/一般財団法人日本規格協会 発行/2420円死ぬまで、働く。97歳・現役看護師の「仕事がある限り働き続ける」生き方安全四よん学がく安全・安心・ウェルビーイングな社会の実現に向けて70歳までの就業機会確保が努力義務化され、高齢者雇用のさらなる進展が期待される。その一方、職場の安全衛生レベルの向上がこれまで以上に求められるようになるということも事実だろう。高齢者が知識と経験を活かし、年齢にかかわりなく活躍し続けるためには、安全で健康に働くための労働安全衛生管理が重要なポイントの一つになるのである。本書は、日本における安全学の第一人者として広く知られている向殿政男氏が中心となり、日常生活における教養としても役立つように、安全学の考え方をわかりやすくまとめたもの。安全学全体を、「基礎安全学」、「社会安全学」、「経営安全学」、「構築安全学」の四つの要素に分けて解説しているところに特徴がある。まずは基礎安全学を学び、その後に他の三つの安全学を学ぶことによって、安全学に関するより深い理解が得られるように工夫されている。人事労務担当者のなかには、安全衛生管理は安全管理者や衛生管理者に一任しているというスタンスの人も少なくないと思われるが、人事労務管理の視点から安全衛生管理のあり方を見直すことも重要。安全学を一から学びたい担当者に最適な入門書としておすすめする。「生涯現役」。この言葉はたいへん魅力的であり、またこうありたいと思える生き方であろう。著者は80年もの職務経験のある現役の看護師。1924(大正13)年生まれ、100歳に手が届く年齢だが、生涯現役を実践している。本書は、著者のいまの職場での働きぶりや、これまでの人生、自身の暮らし、人間関係、苦労や経験についての考えを紹介している。90歳代になっても現役で働けることについて、特別な秘訣を語っているわけではないが、「仕事があるかぎり働き続ける」ことがやりがいを生み、充実した生き方をもたらしているように映る。一方で、この生涯現役の実践には、著者の努力以外に、高齢者の特性を理解し、特性に見合う適切な職務に就かせた人事担当者の存在も忘れてはならない。また、これまでの人生経験から得た「毎日欠かさず草むしり」、「できるだけ歩く」など自分でできることは自分でする暮らし方や、「経験を押しつけず」、「立場をわきまえる」などの人間関係を円滑にする勘所、「苦労は人間性をつくり上げる薬である」などを読者に伝えている。そんな、著者の生き方や知恵に励まされる好著である。生涯現役の生き方を知るために超高齢社会で求められる「安全の常識」を入門解説大江英樹 著/ワニブックス(ワニブックスPLUS新書)/946円インパクトのあるタイトルは、日本の公的年金に対する多くの誤解を解き、正しい知識を持って自分で考え、公的年金をうまく活用してほしい、という本書の目的を表しているようだ。著者は本書にて、公的年金の本質を「年をとって働けなくなった時や、障害を負ってしまった時などの生活を保障する手段である保険機能」と説明する。そして、「これからの公的年金にとって大切な3つのこと」として、①より多くの人が制度に参加すること、②公平であること、③経済が成長すること、をあげている。現在広がっている公的年金の誤解として「年金財政は赤字」、「少子化が進むので年金は崩壊する」などをあげ、それぞれの事実を検証。そのうえで、2022(令和4)年4月に施行された年金制度改正法によって変わることのうち、「被用者保険の適用拡大」、「在職中の年金受給の在り方の見直し」、「受給開始時期の選択の拡大」に注目し、改正の背景やポイントを解説。年金受給開始時期の選択肢が広がる今後、受け取り方の注意点や年金受け取り額を増やす方法などもアドバイスしている。手軽に読める新書判で、定年後のライフプランを考える際の参考になるだろう。知らないと損する年金の真実2022年「新年金制度」対応定年後のライフプランの参考本として

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