エルダー2022年4月号
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2022.44切実だった問題は、ハイパフォーマーの高齢人材に65歳の定年が近づきつつあることでした。会社の成長のため、このような優秀な人材には、定年後も引き続き働いてほしいと思いました。そこで、中高年層の活躍による企業体力の強化とさらなる成長、年齢にかかわらず実力主義を貫ける制度のもとで意欲的に能力を発揮できる環境の構築、この2点を掲げて、再雇用制度を設計しました。―再雇用の基準や、再雇用後の処遇について教えてください。高柳 再雇用の基準は、①本人が希望していること、②組織の推薦があること、③直近の実力評価の成績が一定以上であること、の3点です。再雇用は1年間の有期雇用となり、契約更新の都度、この3要件を確認します。 処遇は、定年前の職種・グレードを継続し、基本給は正社員と同様に、評価による昇降給を行い、各種手当や賞与も正社員と同じ条件で支給します。勤務日数の短縮など、特別な勤務形態は設けません。つまり、雇用形態が1年ごとの有期雇用となる点を除けば、正社員と異なるところはありません。 以前の65歳までの再雇用制度では、再雇用者をシニア社員と呼んでいましたが、今回の70歳までの制度では、再雇用者を「エルダー社員」と呼ぶことにしました。高齢者の活躍事例が多く紹介されている月刊誌『エルダー』を意識して命名したという背景もあります(笑)。 シニア社員時代の再雇用率は5割を切っていましたが、エルダー社員制度では65歳以降も再雇用を希望する社員が5割を超えるようになりました。毎年実施している働きがい調査でも、50歳以上のスコアが大きく上昇し、この間の一連の制度変更は、社員にポジティブにとらえられています。―優秀な高齢人材を引き留めたいというのが今回の再雇用制度導入の大きな動機とのことですが、高齢者の活躍ぶりの一端を教えてください。高柳 プロジェクトのマネジメントですばらしいパフォーマンスをあげている人材、若手を育てた経験が豊富な人材、業務品質を向上させるのに力を発揮している人材など、多くの高齢人材が活躍しています。海外を飛び回り、グローバル企業をはじめ多彩なお客さまから次々と仕事を受注する営業社員もいます。いずれも一朝一夕では身につかないスキルや人脈を十二分に活かした仕事ぶりで尊敬を集めています。―その方々のように、高齢になっても活躍できる人材になれるよう、若手のうちから計画的に育てることも必要ですね。高柳 多様な人材が活躍できる企業になることを目ざして、教育にはかなり力を入れています。多くの施策がありますが、特に象徴的な取組みは、月に1日を教育に充てており、これを部門目標として課していることです。IT業界は変化のスピードが速いので、目先の仕事に追われているだけでは生き残れません。常に自分をアップデートしていけるよう、人材への投資を続けることは、私たちにとって最優先の経営戦略なのです。高齢ハイパフォーマーの活躍継続を目ざし70歳までの再雇用制度を導入(聞き手・文/労働ジャーナリスト鍋田周一 撮影/中岡泰博)TIS株式会社 執行役員 人事本部本部長高柳京子さん

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