エルダー2022年5月号
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2022.512も設置しましょう。滑り止めには床材そのものが滑りづらい製品もありますし、シールを貼るタイプや塗装タイプもあります。倉庫などのような暗い場所は照明器具を増設し明るくすることで、外から入ってきても突然目の前が真っ暗にならないようにしましょう。転倒して骨折、入院ということになれば、別の意味で目の前が真っ暗になってしまいます。(2)転倒予防のためのソフト対策滑りやすい箇所で作業する高齢者には防ぼう滑かつ靴を履いてもらいます。ただし、防滑素材を用いた床面で防滑靴を使用すると、摩擦が大きくなりかえってつまずきの原因にもなるので注意してください。耐滑性の高い靴には「F」(friction:摩擦の略)や「耐滑」の表記が靴のベロ裏や箱にありますので、購入前に確認しましょう。また、靴底の凹凸が減ると耐滑性も低下するので定期的に確認してください。靴底を見れば交換時期が一目でわかるように工夫されている靴もあります。また、上を向いたパイプに靴を引っ掛けるタイプのシューズラックは、履き替えのたびに靴底を確認することができます(図)。床や通路に物が置かれていると、つまずきの原因となるので5S(整理、整とん、清掃、清潔、しつけ)を励行します。床面にこぼれた水や油は滑る原因となるので、放置せずにこまめに清掃しましょう。また、どうしても解消できない段差がある場合は、周囲にトラテープを貼って注意をうながします。実際に転倒が発生した場所にポスターや安全標識を掲示して注意喚起するのもよいでしょう。社内で転倒防止のポスターを募集し、転倒しやすい場所に従業員が手書きしたポスターが貼ってある事業場におうかがいしたことがありますが、微笑ましく温かみがありとても感動しました。高齢者は筋力や柔軟性が低下しているので、疲れるとちょっとしたことでバランスを崩して転倒する恐れがあります。長時間の立ち作業も減らすようにしましょう。「腰痛」予防のポイント3高齢者は筋力が低下しているので、同じ重量の荷物を持っても若年層の労働者より腰部への負担が大きくなります。また、加齢とともに脊せき椎つい骨こつが変形したり、椎つい間かん板ばんが変性することで脊椎の動きが悪くなり、腰痛の原因となる不自然な姿勢をとりがちになります。不自然な姿勢とは、前かがみ、中腰、上体そらし、上体ひねりのような腰や背中に負担がかかる姿勢をさします。ハード対策やソフト対策、あるいは両者の組み合わせによって、不自然な姿勢や重量物の上げ下げ、運搬を避けるようにします。(1)腰痛予防のためのハード対策高齢者が重量物を自力で持ち上げないよう、補助機器を活用します。重量物取扱いの補助機器として、ハンドリフト、バランサー、ポータブルクレーン、コンベアなどさまざまなタイプのものが各メーカーから販売されています。運搬する重量物の形状や業務の内容に合ったものを選定してください。また、作業中に不自然な姿勢にならないよう、作業台の高さや位置を高図 防滑靴の靴底を確認しやすいシューズラックの例

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